− 第4回 −【総括編】
2022年度研修 現地レポート総括
− 第4回 −【総括編】
2022年度研修 現地レポート総括
− 第4回 −【総括編】
ダミー
2022年度研修 現地レポート総括
ダミー
2022年度研修 現地レポート総括
ダミー
“研修生の今”を追う
ダミー
“研修生の今”を追う
当連載の最後となる本篇では、これまで3回にわたった連載の各質問の回答内容から傾向を探り、関係人口拡大のヒントも読み解いて行きます。
今年度の研修への参加を検討されている読者におかれては、下記の昨年度の傾向と連載①から③の各研修生のコメントを応募にあたっての参考としていただければ幸いです。自分はどういう動機や経緯で研修に参加するのか、次の段階へどう進んでいけばよいのか-などを確認、判断する材料として活用ください。
当連載の最後となる本篇では、これまで3回にわたった連載の各質問の回答内容から傾向を探り、関係人口拡大のヒントも読み解いて行きます。
今年度の研修への参加を検討されている読者におかれては、下記の昨年度の傾向と連載①から③の各研修生のコメントを応募にあたっての参考としていただければ幸いです。自分はどういう動機や経緯で研修に参加するのか、次の段階へどう進んでいけばよいのか-などを確認、判断する材料として活用ください。
〈質問1〉【今回の研修に参加した経緯や動機について】
《分母は43人》
- 1)就農に向けて農林業を研修したい
- 2)農林業に関心がある
- 3)研修地の魅力にひかれた
- 4)現在や今後の仕事に研修で学んだことを生かしたい
- 5)農村や里山で暮らしたい
- 6)移住先を探している
- 7)農村を活性化させたい
- 8)食に興味がある
- 9)農業のある暮らしをしたい
- 10人(23.3%)
- 7人(16.3%)
- 6人(14.0%)
- 6人(14.0%)
- 4人 (9.3%)
- 3人 (7.0%)
- 3人 (7.0%)
- 2人 (4.7%)
- 2人 (4.7%)
- 1)、2)、4)、6)、7)のグループ(計29人〈67.4%〉)は、就農や現在の仕事と農林業との連携、地域の活性化、研修地への移住(地域おこし協力隊、就農など)を具体的に検討し、そのうえで研修に応募していました。目標達成の段階を踏んでいるようです。
- 3)、5)、8)、9)のグループ(計14人〈32.6%〉)は、農村や農業と関わりたいとの希望を持っていますが、まだ具体的な段階には至っておらず、自己のテーマを見つけるために研修に参加しています。目標や方向性が明確になれば複業も含め農業を開始し、農山村と関わる可能性が高いと思われます。
- 1)多くのことを学べて勉強になった
- 2)研修に参加してよかった
- 3)研修地がよかった
- 4)ここ(研修地)へ移住して働きたい
- 19人(44.2%)
- 9人(20.9%)
- 9人(20.9%)
- 6人(14.0%)
- 1)自分の生活や仕事に農業を取り入れたい
- 2)農林業に関わり地域を活性化させたい
- 3)今後の展開を検討中
- 4)就農予定
- 14人(32.6%)
- 13人(30.2%)
- 8人(18.6%)
- 8人(18.6%)
- 1)就農に向けて農林業を研修したい 10人(23.3%)
- 2)農林業に関心がある 7人(16.3%)
- 3)研修地の魅力にひかれた 6人(14.0%)
- 4)現在や今後の仕事に研修で学んだことを生かしたい 6人(14.0%)
- 5)農村や里山で暮らしたい 4人 (9.3%)
- 6)移住先を探している 3人 (7.0%)
- 7)農村を活性化させたい 3人 (7.0%)
- 8)食に興味がある 2人 (4.7%)
- 9)農業のある暮らしをしたい 2人 (4.7%)
- 1)就農に向けて農林業を研修したい
10人(23.3%) - 2)農林業に関心がある
7人(16.3%) - 3)研修地の魅力にひかれた
6人(14.0%) - 4)現在や今後の仕事に研修で学んだことを生かしたい
6人(14.0%) - 5)農村や里山で暮らしたい
4人 (9.3%) - 6)移住先を探している
3人 (7.0%) - 7)農村を活性化させたい
3人 (7.0%) - 8)食に興味がある
2人 (4.7%) - 9)農業のある暮らしをしたい
2人 (4.7%) - 1)、2)、4)、6)、7)のグループ(計29人〈67.4%〉)は、就農や現在の仕事と農林業との連携、地域の活性化、研修地への移住(地域おこし協力隊、就農など)を具体的に検討し、そのうえで研修に応募していました。目標達成の段階を踏んでいるようです。
- 3)、5)、8)、9)のグループ(計14人〈32.6%〉)は、農村や農業と関わりたいとの希望を持っていますが、まだ具体的な段階には至っておらず、自己のテーマを見つけるために研修に参加しています。目標や方向性が明確になれば複業も含め農業を開始し、農山村と関わる可能性が高いと思われます。
- 1)多くのことを学べて勉強になった 19人(44.2%)
- 2)研修に参加してよかった 9人(20.9%)
- 3)研修地がよかった 9人(20.9%)
- 4)ここ(研修地)へ移住して働きたい 6人(14.0%)
- 1)多くのことを学べて勉強になった
19人(44.2%) - 2)研修に参加してよかった
9人(20.9%) - 3)研修地がよかった
9人(20.9%) - 4)ここ(研修地)へ移住して働きたい
6人(14.0%) - 1)自分の生活や仕事に農業を取り入れたい 14人(32.6%)
- 2)農林業に関わり地域を活性化させたい 13人(30.2%)
- 3)今後の展開を検討中 8人(18.6%)
- 4)就農予定 8人(18.6%)
- 1)自分の生活や仕事に農業を取り入れたい
14人(32.6%) - 2)農林業に関わり地域を活性化させたい
13人(30.2%) - 3)今後の展開を検討中
8人(18.6%) - 4)就農予定
8人(18.6%)
さまざまな経緯や動機で応募
上記のように、2022年度の研修に参加した研修生は、さまざまな経緯や動機から研修に応募していました。今後の方針が明瞭に決まっているグループと模索中のグループの2つに分類し、割合と傾向を探ってみました。
参加した研修生の約3割は自分のテーマを模索中。約7割はすでに明確
〈質問2〉【研修に実際参加してみた印象について】
《分母は43人》
研修内容、研修地とも満足
研修内容と研修地については、参加者は全体的に満足もしくは好評でした。
1)と2)の合計は65.1%と、7割近くの研修生が研修は期待したとおりかそれ以上と研修内容の良さを一番に挙げていました。3)と4)の合計も34.9%と3割以上の人が研修地の良さを一番に挙げ、研修地の評価も高かったと思われます。
〈質問3〉【今後の展開や抱負について】
《分母は43人》
8割の参加者が農業と関わることを研修参加前に決めている
1)2)4)に回答した人は全体の8割を超え、研修生の大半が研修参加前に農業と関わることを明確に決めていました。
3)の約2割の研修生は、まだ検討中の段階で具体的なテーマは決まっていませんが、「時期は分からないが農業に関わりたい。今回の研修を生かせるように頑張りたい」「農業に関わる仕事ややりたいことを固めたい。応募している当地の地域おこし協力隊に受かりたいが、受からなくてもここに来ると思う(以上南阿蘇村)「農業を通じて日本の良さを認識しており、日本の資源を生かすことができればと思っている」(仙北市)のように、将来的に就農、移住などで関係人口となる可能性が高いと思われます。
〈質問1〉【今回の研修に参加した経緯や動機について】
《分母は43人》
さまざまな経緯や動機で応募
上記のように、2022年度の研修に参加した研修生は、さまざまな経緯や動機から研修に応募していました。今後の方針が明瞭に決まっているグループと模索中のグループの2つに分類し、割合と傾向を探ってみました。
参加した研修生の約3割は自分のテーマを模索中。約7割はすでに明確
〈質問2〉【研修に実際参加してみた印象について】
《分母は43人》
研修内容、研修地とも満足
研修内容と研修地については、参加者は全体的に満足もしくは好評でした。
1)と2)の合計は65.1%と、7割近くの研修生が研修は期待したとおりかそれ以上と研修内容の良さを一番に挙げていました。3)と4)の合計も34.9%と3割以上の人が研修地の良さを一番に挙げ、研修地の評価も高かったと思われます。
〈質問3〉【今後の展開や抱負について】
《分母は43人》
8割の参加者が農業と関わることを研修参加前に決めている
1)2)4)に回答した人は全体の8割を超え、研修生の大半が研修参加前に農業と関わることを明確に決めていました。
3)の約2割の研修生は、まだ検討中の段階で具体的なテーマは決まっていませんが、「時期は分からないが農業に関わりたい。今回の研修を生かせるように頑張りたい」「農業に関わる仕事ややりたいことを固めたい。応募している当地の地域おこし協力隊に受かりたいが、受からなくてもここに来ると思う(以上南阿蘇村)「農業を通じて日本の良さを認識しており、日本の資源を生かすことができればと思っている」(仙北市)のように、将来的に就農、移住などで関係人口となる可能性が高いと思われます。
◆編集後記◆
今回の研修生の回答の傾向に加え、都市部からの移住や定住の受入れが順調な地域の対策を併せて見ますと、以下の2点が重要なポイントであることが分かります。研修への参加を検討している方をはじめ、研修事業者および受け入れ先の地域や自治体の方にとられても参考になれば幸甚です。
【1】
移住・定住や就農、テレワークなどの受け入れ体制は、受け入れ側の地域や自治体によって大きな差があり、移住や就農を検討している研修生の皆様は、候補先の状況をよく確認することが大事です。また、受け入れ側は受け入れる本気度が試されています。
1.自治体の充実した移住制度と担当者が決め手
研修地の香川県三豊市で、果樹の収穫などを研修生に指導した近畿地区出身のミカン農家の夫婦は、「夫婦とも三豊市とは全く縁がありません。移住先を探していた際に三豊市の制度が充実しており、担当者もしっかりしていたことが移住の決め手となりました」と自治体側の制度内容と真剣な姿勢が決定打であったと話しています。またある移住者は、東京で行われた移住に関する各県合同の説明会に参加した際の移住先の担当者の印象がとても良かったので移住はその県に決めたと話しています。
今回の研修でも43人中35人が、就農や農林業との連携、研修地への移住を具体的に検討しており、研修には自治体の関係人口や担当部門との連携が必須と言えます。注意点としては、移住しても事前の説明と実際が違うなどの理由で撤退する場合も散見され、相談の段階から移住や就業などが落ち着くまで同じ担当者による一貫したフォローが求められます。
2.複業や2拠点での活動への対応
現在の仕事と農林業との連携などを検討している人は14人と全体の3割を超え、5人が2拠点での活動を検討していると答えています。関係人口の受入れを積極的に進めたい自治体などは、ノマドワーカーや短期出張、週末移住などのビジネススタイルに対応できるテレワークやコワーキング設備、相談窓口の設置は必須と言えます。
【2】
ミスマッチを避けるため、受け入れ先は、どういう人に来てほしいか、何をしてほしいかなどの情報発信を詳細で具体的かつ明瞭に行うことが重要です。情報発信はSNSが有効。
1.SNSでの情報発信の有効性
研修生の多くはSNSを中心に研修情報を入手し、応募しています。自治体や地域は、強く明瞭なメッセージをSNSで発信することが有効です。豊能町の研修参加者は、フェイスブックで豊能町の貸農園を紹介されたことがきっかけに同町との縁が生まれました。新潟県十日町市池谷集落では、ふるさと納税の活用をYouTubeでPRし、米の販売額を大幅に増加させるなどの成果を挙げています。
2.農業系大学へのアピール
就農への誘いは農業系大学への発信も強化すべきです。研修に参加した農業系の大学生は就農を進路として明確に目指しており、研修メニューや研修地の魅力を大学へ発信すれば効果が高いと思われます。
3.地域の魅力を強くアピール
地域の魅力をアピールすることは効果が高くとても重要です。今回も6人が研修地の魅力にひかれて参加したと回答しており、地域外の人材など外部の視点を活用して強力に魅力をアピールすべきです。
4.欲しい人材を具体的に伝える
受入れ先はその土地が欲しい人材や仕事についてできるだけ具体的かつ明瞭な情報を発信することが重要です。事前のニーズや発信が不明瞭なため移住後に行き違いが発生し、トラブルになるケースもあります。こうしたことを避けるためにも移住前後は同一の担当者の配置が必須です。
5.イベントも効果が高い
移住説明会(オンラインも含む)やイベントの発信、開催も移住のきっかけとなることが多いです。仙北市の研修に参加した研修生は、同市の地域おこし協力隊の知人から紹介を受け同市の田沢湖のイベントに参加。その際に当地の印象がよかったので研修に参加し、研修後地域おこし協力隊として着任しています。
◆筆者からの提案
“農家出身者は農業をやりたがっている”
農業(兼業を含む)を営む実家を就職などで離れた農家出身者は、関係人口の拡大に大きく貢献する可能性があります。
筆者の例で恐縮ですが、岡山県の実家は今も米と桃を生産する農家で、私も大学の入学で上京するまで農業の手伝いをしていました。就職後も農作業の繁忙期に休祭日などに帰省し、桃の袋掛けや収穫を手伝うこともありました。
就職などで農業から離れてはいますが、農作業に慣れている農家出身者は季節労働や複業での就農など、農村の関係人口の拡大に貢献できると思います。また、年齢が上がるにつれ農業をやりたいと思う人が増える傾向があります。研修にも一定数この層が参加しており、この層をターゲットにした自治体の就農の優遇制度があれば、反応する人口は多いのではないでしょうか。
農業法人は採用条件として50歳代までとしているところが多いようですが、定年後に農業と関わりたいと考えている会社勤務の人も多く、農作業など体力が必要な若年と同様の仕事だけではなく、事務や営業、ホームページ作成、SNSやネットを利用した販売業務での採用も考慮したらどうでしょうか。農業以外のスキルも有効活用すべきだと思います。
◆最後に
当記事で2022年度を総括する4回の連載は終了しますが、5回目のコラムより、研修後に移住や就農した方々の今をレポートします。引き続き当サイトを活用いただければ幸いです。
(了)
◆編集後記◆
今回の研修生の回答の傾向に加え、都市部からの移住や定住の受入れが順調な地域の対策を併せて見ますと、以下の2点が重要なポイントであることが分かります。研修への参加を検討している方をはじめ、研修事業者および受け入れ先の地域や自治体の方にとられても参考になれば幸甚です。
【1】
移住・定住や就農、テレワークなどの受け入れ体制は、受け入れ側の地域や自治体によって大きな差があり、移住や就農を検討している研修生の皆様は、候補先の状況をよく確認することが大事です。また、受け入れ側は受け入れる本気度が試されています。
1.自治体の充実した移住制度と担当者が決め手
研修地の香川県三豊市で、果樹の収穫などを研修生に指導した近畿地区出身のミカン農家の夫婦は、「夫婦とも三豊市とは全く縁がありません。移住先を探していた際に三豊市の制度が充実しており、担当者もしっかりしていたことが移住の決め手となりました」と自治体側の制度内容と真剣な姿勢が決定打であったと話しています。またある移住者は、東京で行われた移住に関する各県合同の説明会に参加した際の移住先の担当者の印象がとても良かったので移住はその県に決めたと話しています。
今回の研修でも43人中35人が、就農や農林業との連携、研修地への移住を具体的に検討しており、研修には自治体の関係人口や担当部門との連携が必須と言えます。注意点としては、移住しても事前の説明と実際が違うなどの理由で撤退する場合も散見され、相談の段階から移住や就業などが落ち着くまで同じ担当者による一貫したフォローが求められます。
2.複業や2拠点での活動への対応
現在の仕事と農林業との連携などを検討している人は14人と全体の3割を超え、5人が2拠点での活動を検討していると答えています。関係人口の受入れを積極的に進めたい自治体などは、ノマドワーカーや短期出張、週末移住などのビジネススタイルに対応できるテレワークやコワーキング設備、相談窓口の設置は必須と言えます。
【2】
ミスマッチを避けるため、受け入れ先は、どういう人に来てほしいか、何をしてほしいかなどの情報発信を詳細で具体的かつ明瞭に行うことが重要です。情報発信はSNSが有効。
1.SNSでの情報発信の有効性
研修生の多くはSNSを中心に研修情報を入手し、応募しています。自治体や地域は、強く明瞭なメッセージをSNSで発信することが有効です。豊能町の研修参加者は、フェイスブックで豊能町の貸農園を紹介されたことがきっかけに同町との縁が生まれました。新潟県十日町市池谷集落では、ふるさと納税の活用をYouTubeでPRし、米の販売額を大幅に増加させるなどの成果を挙げています。
2.農業系大学へのアピール
就農への誘いは農業系大学への発信も強化すべきです。研修に参加した農業系の大学生は就農を進路として明確に目指しており、研修メニューや研修地の魅力を大学へ発信すれば効果が高いと思われます。
3.地域の魅力を強くアピール
地域の魅力をアピールすることは効果が高くとても重要です。今回も6人が研修地の魅力にひかれて参加したと回答しており、地域外の人材など外部の視点を活用して強力に魅力をアピールすべきです。
4.欲しい人材を具体的に伝える
受入れ先はその土地が欲しい人材や仕事についてできるだけ具体的かつ明瞭な情報を発信することが重要です。事前のニーズや発信が不明瞭なため移住後に行き違いが発生し、トラブルになるケースもあります。こうしたことを避けるためにも移住前後は同一の担当者の配置が必須です。
5.イベントも効果が高い
移住説明会(オンラインも含む)やイベントの発信、開催も移住のきっかけとなることが多いです。仙北市の研修に参加した研修生は、同市の地域おこし協力隊の知人から紹介を受け同市の田沢湖のイベントに参加。その際に当地の印象がよかったので研修に参加し、研修後地域おこし協力隊として着任しています。
◆筆者からの提案
“農家出身者は農業をやりたがっている”
農業(兼業を含む)を営む実家を就職などで離れた農家出身者は、関係人口の拡大に大きく貢献する可能性があります。
筆者の例で恐縮ですが、岡山県の実家は今も米と桃を生産する農家で、私も大学の入学で上京するまで農業の手伝いをしていました。就職後も農作業の繁忙期に休祭日などに帰省し、桃の袋掛けや収穫を手伝うこともありました。
就職などで農業から離れてはいますが、農作業に慣れている農家出身者は季節労働や複業での就農など、農村の関係人口の拡大に貢献できると思います。また、年齢が上がるにつれ農業をやりたいと思う人が増える傾向があります。研修にも一定数この層が参加しており、この層をターゲットにした自治体の就農の優遇制度があれば、反応する人口は多いのではないでしょうか。
農業法人は採用条件として50歳代までとしているところが多いようですが、定年後に農業と関わりたいと考えている会社勤務の人も多く、農作業など体力が必要な若年と同様の仕事だけではなく、事務や営業、ホームページ作成、SNSやネットを利用した販売業務での採用も考慮したらどうでしょうか。農業以外のスキルも有効活用すべきだと思います。
◆最後に
当記事で2022年度を総括する連載は終了しますが、2023年度は各研修のレポートに加え、研修レポートとは違う視点でコラム記事も定期的に掲載する予定です。研修後に移住や就農した方のレポートなど、引き続き研修参加を検討している方々の参考になる内容を提供し、併せて関係人口拡大のヒントを探っていきます。引き続き当サイトを活用いただければ幸いです。
最後まで当連載をご愛読いただき厚く御礼申し上げます。最後に読者の皆様のますますのご活躍とご発展をお祈り申し上げます。ありがとうございました。
(了)
◆編集後記◆
今回の研修生の回答の傾向に加え、都市部からの移住や定住の受入れが順調な地域の対策を併せて見ますと、以下の2点が重要なポイントであることが分かります。研修への参加を検討している方をはじめ、研修事業者および受け入れ先の地域や自治体の方にとられても参考になれば幸甚です。
【1】
移住・定住や就農、テレワークなどの受け入れ体制は、受け入れ側の地域や自治体によって大きな差があり、移住や就農を検討している研修生の皆様は、候補先の状況をよく確認することが大事です。また、受け入れ側は受け入れる本気度が試されています。
1.自治体の充実した移住制度と担当者が決め手
研修地の香川県三豊市で、果樹の収穫などを研修生に指導した近畿地区出身のミカン農家の夫婦は、「夫婦とも三豊市とは全く縁がありません。移住先を探していた際に三豊市の制度が充実しており、担当者もしっかりしていたことが移住の決め手となりました」と自治体側の制度内容と真剣な姿勢が決定打であったと話しています。またある移住者は、東京で行われた移住に関する各県合同の説明会に参加した際の移住先の担当者の印象がとても良かったので移住はその県に決めたと話しています。
今回の研修でも43人中35人が、就農や農林業との連携、研修地への移住を具体的に検討しており、研修には自治体の関係人口や担当部門との連携が必須と言えます。注意点としては、移住しても事前の説明と実際が違うなどの理由で撤退する場合も散見され、相談の段階から移住や就業などが落ち着くまで同じ担当者による一貫したフォローが求められます。
2.複業や2拠点での活動への対応
現在の仕事と農林業との連携などを検討している人は14人と全体の3割を超え、5人が2拠点での活動を検討していると答えています。関係人口の受入れを積極的に進めたい自治体などは、ノマドワーカーや短期出張、週末移住などのビジネススタイルに対応できるテレワークやコワーキング設備、相談窓口の設置は必須と言えます。
【2】
ミスマッチを避けるため、受け入れ先は、どういう人に来てほしいか、何をしてほしいかなどの情報発信を詳細で具体的かつ明瞭に行うことが重要です。情報発信はSNSが有効。
1.SNSでの情報発信の有効性
研修生の多くはSNSを中心に研修情報を入手し、応募しています。自治体や地域は、強く明瞭なメッセージをSNSで発信することが有効です。豊能町の研修参加者は、フェイスブックで豊能町の貸農園を紹介されたことがきっかけに同町との縁が生まれました。新潟県十日町市池谷集落では、ふるさと納税の活用をYouTubeでPRし、米の販売額を大幅に増加させるなどの成果を挙げています。
2.農業系大学へのアピール
就農への誘いは農業系大学への発信も強化すべきです。研修に参加した農業系の大学生は就農を進路として明確に目指しており、研修メニューや研修地の魅力を大学へ発信すれば効果が高いと思われます。
3.地域の魅力を強くアピール
地域の魅力をアピールすることは効果が高くとても重要です。今回も6人が研修地の魅力にひかれて参加したと回答しており、地域外の人材など外部の視点を活用して強力に魅力をアピールすべきです。
4.欲しい人材を具体的に伝える
受入れ先はその土地が欲しい人材や仕事についてできるだけ具体的かつ明瞭な情報を発信することが重要です。事前のニーズや発信が不明瞭なため移住後に行き違いが発生し、トラブルになるケースもあります。こうしたことを避けるためにも移住前後は同一の担当者の配置が必須です。
5.イベントも効果が高い
移住説明会(オンラインも含む)やイベントの発信、開催も移住のきっかけとなることが多いです。仙北市の研修に参加した研修生は、同市の地域おこし協力隊の知人から紹介を受け同市の田沢湖のイベントに参加。その際に当地の印象がよかったので研修に参加し、研修後地域おこし協力隊として着任しています。
◆筆者からの提案
“農家出身者は農業をやりたがっている”
農業(兼業を含む)を営む実家を就職などで離れた農家出身者は、関係人口の拡大に大きく貢献する可能性があります。
筆者の例で恐縮ですが、岡山県の実家は今も米と桃を生産する農家で、私も大学の入学で上京するまで農業の手伝いをしていました。就職後も農作業の繁忙期に休祭日などに帰省し、桃の袋掛けや収穫を手伝うこともありました。
就職などで農業から離れてはいますが、農作業に慣れている農家出身者は季節労働や複業での就農など、農村の関係人口の拡大に貢献できると思います。また、年齢が上がるにつれ農業をやりたいと思う人が増える傾向があります。研修にも一定数この層が参加しており、この層をターゲットにした自治体の就農の優遇制度があれば、反応する人口は多いのではないでしょうか。
農業法人は採用条件として50歳代までとしているところが多いようですが、定年後に農業と関わりたいと考えている会社勤務の人も多く、農作業など体力が必要な若年と同様の仕事だけではなく、事務や営業、ホームページ作成、SNSやネットを利用した販売業務での採用も考慮したらどうでしょうか。農業以外のスキルも有効活用すべきだと思います。
◆最後に
当記事で2022年度を総括する連載は終了しますが、2023年度は各研修のレポートに加え、研修レポートとは違う視点でコラム記事も定期的に掲載する予定です。研修後に移住や就農した方のレポートなど、引き続き研修参加を検討している方々の参考になる内容を提供し、併せて関係人口拡大のヒントを探っていきます。引き続き当サイトを活用いただければ幸いです。
最後まで当連載をご愛読いただき厚く御礼申し上げます。最後に読者の皆様のますますのご活躍とご発展をお祈り申し上げます。ありがとうございました。
(了)