【連載4】2023年度の研修を振り返る~総括・分析編
当連載の最後となる本篇では、「2023年度の研修を振り返る」として3回にわたった連載の各質問の回答内容から、2022年度の回答内容との比較と共に2023年度の傾向を探り、関係人口拡大のヒントも読み解いて行きます。
今年度の研修への参加を検討されている読者におかれては、2022年度、2023年度両年の傾向を応募にあたっての参考としていただければ幸いです。「自分はどういう動機や経緯で研修に参加するのか」、「次の段階へどう進んでいけばよいのか」などを確認、判断する材料としてどうぞ活用ください。
教えてください
研修生の9割が、明瞭な動機で参加。前年度より大幅増!
2022年度の研修生は、多数の経緯や動機から研修に応募し、約3割は自分のテーマを模索中。約7割は方針が明瞭という傾向でした。
2023年度は、2022年度と同じ分類の方法で回答をまとめると、研修生の約9割が明確な動機で参加した。研修事業が複数年度で実施されたことで応募者が検討する時間が増え、方向性が明瞭になったと思われます。
個別には、2022年度は4番目だった「現在や今後の仕事に研修で学んだことを生かしたい」が2023年度は最上位となり、大幅に増加(14.0%⇒35.3%へ)。
「就農へ向けて農林業を研修したい」は大きな差がなかった(23.3%⇒20.6%)ことから、就農意欲については変わらず、「農業を現在や今後の仕事と並走させる」志向を持つ研修生が増加していることが伺えます。また、「農林業に関心がある」も、16.3%から32.4%と倍増しており、農業そのものへ関心を持つ人が増えていると言えそうです。
教えてください
すべての研修生が、「研修内容に満足」。2022年度より大幅増!
2022年度の1)と2)の合計は65.1%と、7割近くの研修生が研修は期待したとおりかそれ以上と研修内容の良さを一番に挙げました。
2023年度の1)と2)の合計は97.1%と、研修生のほぼすべてが研修内容に満足。研修事業が複数年度で継続され、研修への参加動機が明瞭で意欲的な参加者が増えたと共に研修事業者が作成するプログラムもより充実した内容となったことが理由と思われます。
教えてください
参加者の半数が、「農業と関わり地域を活性化させたい」(3割から5割へ)
2022年度は、1)2)4)に回答した人は全体の約8割。2023年度で1)2)4)に回答した人は約9割で、目的が明確な参加者が増えました。これは、明確な動機で参加した研修生が増えたことで目的の明確化も連動した結果と思われます。
個別には、「農林業に関わり地域を活性化させたい」が30.2%(2022年度)から50.0%(2023年度)へ大幅に増加。
個人の就農と地域の活性化という公共性との両立を志向する研修生の割合が増えています。
現在の仕事と農業を両立する「農Ⅹ」の形態の就農を志向する人が増えている!
地域の活性化を同時に図ろうとする意識の人が増えている!
人口減少が進み農村で後継者不足が深刻な現在の日本にとって、都市部などの多様な人材が地域と関わる関係人口の拡大は、地方の活性化に欠かせない救世主的な存在となっています。2023年度の研修生の傾向は、関係人口の拡大が進行する動向を示しており、心強いものと言えます。
国土交通省が2024(令和6)年6月18日に発表した首都圏白書によると、東京圏在住者を対象にした調査で、20代の44.8%が地方移住に関心があると答えており、コロナ禍の前後で価値観やライフスタイルが変化しており、地方自治体が移住や二拠点居住に取り組むことで地域活性化につながると期待しています。行政側の対応についての2つのニュースを案内します。どうぞ参照ください。
・二拠点での活動を後押しする法律が成立。都市部の人が地方でも住居が持ちやすくなり働く環境も整備される。(2024〈令和6〉年5月15日)
「二地域居住」促進制度創設=改正法が成立
都市と地方などに生活拠点を持つ「二地域居住」を促進する制度創設を盛り込んだ改正広域的地域活性化基盤整備法が15日の参院本会議で、与野党の賛成多数で可決、成立した。市町村が促進計画を作成すれば、二地域居住者の住まいや職場環境を整える際に国の支援が受けやすくなるのが柱。公布から6カ月以内に施行する。
子育て世帯を中心に、地方への新たな人の流れを創出するのが狙い。市町村は空き家の改修、シェアハウスやテレワーク用の共同オフィスの立ち上げなどの環境整備を行う。計画自体を官民連携で作る協議会制度も創設する。
また、住まいの確保やコミュニティー形成に取り組むNPOや不動産会社などを支援法人として指定する制度も設け、自治体が空き家などの情報を提供しやすくする。
(時事通信社iJAMPサービスより)
都市と地方に二つの拠点を持って生活すること。平日は都市で働き、週末は地方で副業に取り組んだり、ゆとりある生活を楽しんだりするスタイルが想定される。
政府は二地域居住の推進を通じ、特定の地域と継続的に関わる「関係人口」の拡大に期待。関係人口拡大に取り組む自治体を2027年度までに1200団体とする目標を掲げている。
・石川県が能登復興プランを公表。人口減少が続く中で活力を維持するため、被災地と継続的に関わりを持つ「関係人口」を最重点課題として拡大する方針を明らかにした(2024〈令和6〉5月20日)。
能登地震の復興プラン公表=関係人口の拡大明記―石川県
石川県は20日、能登半島地震からの再建を図る「創造的復興プラン」の最終案を公表した。9年後の2032年度末までを計画期間とし、災害に強い地域づくりへの取り組みのほか、人口減少が続く中で活力を維持するため、被災地と継続的に関わりを持つ「関係人口」を拡大する方針を盛り込んだ。県議会に示した上で最終決定する。
プランは住民との対話集会や首長への聞き取り、有識者会議の議論を経てまとめた。インフラやなりわい、暮らしの再建に向けた各施策について、短期(2年)、中期(5年)、長期(9年)に分け、実現までの見通しを示した。スローガンには「能登が示す、ふるさとの未来」を掲げた。
関係人口の拡大について、プランは「最重点課題」と明記。復興に関わる官民の調整や支援の橋渡しを行う「連携復興センター」を設け、復興を契機に関係人口の拡大を図るとした。
壊滅的被害に遭った電気、水道などのインフラに関しては「新たな視点に立った強靱(きょうじん)化」が必要と指摘。災害に強く、持続可能なインフラ構築を図るため、公共の電力網や水道網から独立し、集落単位で調達する自立分散型エネルギーなども選択肢と位置付けた。
能登半島の沿岸部を「絶景海道」として整備する計画や、コミュニティー再建のために能登の祭りを支援する方針も打ち出した。
◇復興プランのポイント
一、関係人口拡大は最重点課題
一、災害に強い地域づくりを推進
一、短・中・長期の計画期間で復旧・復興
一、自立分散型のインフラ構築も選択肢
一、能登沿岸部を「絶景海道」として整備
(時事通信社iJAMPサービスより)
当記事で2023年度を総括する連載は終了しますが、研修参加を検討している方々の参考になる別途連載も提供し、関係人口拡大のヒントを探ってまいります。今後とも当サイトを活用いただければ幸いです。
最後まで当連載をご愛読いただき厚く御礼申し上げます。最後に読者の皆様のますますのご活躍とご発展をお祈り申し上げます。ありがとうございました。