【リポート】−株式会社 JTB−

株式会社 JTB

JTBさんが農業研修での人材発掘事業に取り組まれたのはどういうきっかけがあったのでしょうか?

 昨年からのコロナ禍の中で、観光業に従事をされている方々の仕事が減ってしまいました。

 その一方、農業には労働力不足という状況が前々からありました。

 そこで、間にいる我々が両者の課題をなんとかつなげられないかと考えたのがそもそものきっかけでした。

 その提案をJAさんにしたところ、JA全農さんから一緒にやりませんかというお話をいただき、「農業労働力支援事業」を今年から展開しております。

 そうした動きの中で、今回この農水省さんの人材発掘事業の募集がありましたので、企画を提出して採択いただいたということです。

JTBさんの事業ではどのような研修をされるのでしょうか?

 座学研修と実地研修の二つに分かれています。前半は座学をオンラインで4日間受講し、後半は実地研修として現場全国5カ所にそれぞれ行っていただきます。実地研修では農作業の実践的な体験と、地域の方々との交流を通じその地域を深く知ってもらうという交流体験の二つに分けてその両方を体験していただくというものです。

5カ所の地域はどうやって選定されたのでしょうか?

 例えば大分県は、もともと農泊の発祥の地である宇佐市安心院というところが研修先です。そこなら、農業体験もできますし、地元の方々との交流がうまく図れるのではないかと考えました。長野県の飯山では、リンゴの収穫や、山道のトレイルの整備をする体験をしてもらっています。いろいろなメニューが組めそうなところを5カ所選定いたしました。

「おためし農業」での研修は、どのようなスケジュールで進むのでしょうか?

 就農を考えている方でも、実際に自分がどこまでやれるのか、心構えも体力的にもまだわからない方も多いと思います。そこで、まずは座学を受けていただき、その後の実地研修では7日間連続で行うコースと、週末を中心に3日と4日で計7日を2週で行うコースを用意しました。

 実施研修のうち3日間は農作業体験で、残りの4日間は地域との交流体験です。農業はやはり一人でできるものではありませんから、地域コミュニティの一員となって、いかに良い関係を作って生活できるかという環境づくりが非常に大事だと思っています。その前段として、地域の暮らしがどういうものかを知っていただければ、農業を始める場合、イメージがしやすくなるのではと考えています。

応募はどのような状況でしょうか?

 全体で100名募集していいますが、すでに定員に達しているコースとそうでないコースがあります。想定していたよりは年代が高めの方が多いというのが今のところの印象です。具体的には、50代の方が3分の1、40代の方が3分の1、30代以下の方が3分の1という状況で、最初はもうちょっと学生さんや若い方が多いかと思っていましたが、そうではありませんでした。早期退職をされた50代の方とか、就職氷河期に当たる40代の方が多いという感じです。

農業研修を受け方が、農業の中のどのような仕事に就くとイメージされていますか?

 そうですね。脱サラして自営農家になるということもあるでしょうが、それ以外に農業での働き方にはいろいろな方法があります。まずは農業法人で働いてキャリアを積むというやり方もあります。座学や現地を体験してもらって、研修が終わったときに、自分なら農業にどういう関わり方ができるだろうかと、自分と対話して見つけていただくのが我々としての願いです。

株式会社 JTB

いま都市に住む人の中には、コロナ禍で自分の仕事を見つめ直した人もいると思いますが、募集してみてどのような手ごたえがありましたか?

 今回応募をしてくださった方々の全員とオンラインで面接させてもらいましたが、やはりセカンドキャリアや、これからの生き方をどうしていくべきかを考えて、農業がその選択肢の一つになっています。就農というのが選択肢として皆さんの中に広がっている実感はありました。本当に「先月で会社を辞めました」という方もいらっしゃいました。

 地域の方々にも、事前にできるだけ、こういった目的でこういう方々が来ますので、とお伝えするようにしています。何を求めて地域に来られるのかを分かった上で、迎えしてもらった方が、コミュニケーションを取りやすくなるのかなと考えています。

農業研修は、どのような主体で受け入れているのでしょうか?実際に就農したいとなった場合、サポート体制はあるのでしょうか?

 研修は、地元自治体の観光担当部署やツーリズムの会社、いわゆるDMOという観光地域づくり法人が窓口になってくれています。実際に就農となった場合は、やはり人のつながりが大事だと思いますので、ぜひ我々の方に一度ご連絡をいただいて、そこからどうつなげばいいかアドバイスができたらなと思います。

 あとはそれぞれの自治体ごとに就農したい人に対する補助制度が充実しているところが多いですから、そういったところをご紹介しようと考えています。

新しい時代、ウィズコロナの時代に求められる農業人材といいますか農村に欲しい人材とはどういうものでしょうか?

 そうですね、例えばITに強い方であれば、農業をどう効率化するかとか、そういう部分で還元できるかもしれませんし、若手の方であれば、将来的にはその地域に溶け込んでいって、農業を廃業する方から農地を譲り受けるなど、そういった形で生産を守っていく動きも出てくるのではないかなと思います。

 就農を希望する方も、まだどういうことが地域の役に立つのか分からないと思いますので、この研修を通じて現地の方とコミュニケーションをとる中で、ああそれだったら自分も貢献できて役に立てるかもしれないということが生まれてくれば、素晴らしいと思います。

都市と農村の関係が見直されている中で、関係人口を増やしていこうという動きがあるわけですが、持続可能な都市と地域の関係について、その両方を知っているJTBさんとしてこの事業をどのように受け止めていらっしゃいますか?

 やはり農村部での農業人口が減っている、このままでは農村がもたなくなってしまうという強い危機感がベースにあります。直接的な移住だけでなく、もっとソフトな関係人口としての交流があって、結果として皆さんが農業に関心を持ってくださるようになってほしいと思います。我々としては、日本の農業生産を支えていくためのお手伝いが少しでもできれば幸いです。  今回の研修事業が、そういった交流を深める場を作るという意味で、皆さんの役に立つのであれば、とても嬉しく思います。(了)

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