【連載5】 “研修生の今”を追う2024

2024年度も22、23年度に引き続き、研修に参加された方々の研修後の就農などの動向を取材する記事をお届けします。25年度の研修参加を検討されている皆様の検討の一助となれば幸甚です。 どうぞご高覧ください。
【キトウメグミさん一家の挑戦】
当コラムでは、2023年度の農ライファーズ様主催の神奈川県平塚市の研修(23年12月実施)に参加し、家族4人で埼玉県から北海道下川町へ移住したキトウメグミさんの「今」を追いました。
キトウメグミさんをご紹介します
キトウさんは、2人のお子さんと共に2022年4月に埼玉県から北海道下川町へ移住し(23年に夫も移住)、同町の地域おこし協力隊員として小規模のフルーツトマト農家になるための研修を受けており、3年の研修期間のうち2年目の23年冬に関わり創出事業の現地研修に参加しました。以下は研修時にキトウさんに伺った質問と回答です。

ジャガイモの収穫に励むキトウさん(手前)
◆関わり創出事業〈23年度〉インタビュー内容
Q1>研修に参加した経緯や思いなどを教えてください。
―埼玉から北海道へ 農業移住します。現在小規模農家を目指し、 トマト農家になるための研修を受けています。これからの農業はさまざまな点で厳しいですが、課題に負けない強さと戦略を持ちたいと思い、どのような戦略を持てばよいのか、その答えを求めて参加しました。
Q2>実際に研修に参加してみた感想はいかがでしょうか。
―自分ができることしか考えていなかったと感じました。もっといろいろな可能性を考え自分のやりたいことを言葉にし、自分の人生をデザインしていきたいと思いました。
Q3>今回の研修で学んだことをどう展開するかなどこれからの抱負を教えてください。
―市場に出ない規格外野菜を地域資源として長期保存加工し、当地ならではの防災食が作れないかと考えている。地域の資源やつながりを活用し課題解決の一翼を担うプレーヤーになることを目指し、これから農的暮らしを実践していきたい。
~平塚の土壌の説明を受ける.jpg)
平塚市の研修で土壌の成分の説明を聞くキトウさん(右端)

平塚市の研修を終えて全員で記念撮影(後列左端がキトウさん)
北海道へ移住を決めた理由と目的
千葉県出身のキトウさんが埼玉県から北海道への移住を決断した理由については、「これから先、どんな暮らしをしたいのか、どんな場所で、どんな風に生きていきたいのか。できることからやりたいことへ。これからは自分たちで前に進めているという実感が持てる生き方をしたい。家族でよく話をして考えていったその先に『移住』という選択肢があった」と話しています。また、「第1子と第3子は12歳の歳の差がありまだまだ続く子育て。この最後の子育ての時間を、自然の中でのびのびと楽しみたい。0→1(ゼロイチ)にできる仕事を。無理のない暮らしをしたい。自分の手で作物を作り出す農業をやろう !」を目的として移住したということです。
キトウさん一家の移住へのタイムライン
キトウさん一家が埼玉県から北海道下川町へ移住するタイムラインをご案内します。
※北海道下川町 下川町 -道北・”ワクワク”が生まれるまち-
キトウメグミさんとお子さん2人で町営住宅に入居。
夫は埼玉県で仕事があったため2拠点生活。
継承予定の農場で、夫婦2人で農業研修。中古住宅を購入しリフォーム。
〖2024年〗移住3年目。継承予定の農場で、夫婦2人で農業研修。
10月に下川町より就農認定を受ける。
主力作物はフルーツトマト 農場名はMKファーム
キトウさんはついに今年(2025年)1月よりフルーツトマト農家として新規就農しました。既存の農場を継承し、農場名を前後の所有者家族の2つのイニシャルを取り「MKファーム」と命名。高糖度で棚もちが良く他の生産地との作柄の違いなどで、バイヤーや売り場から評価が高い生鮮フルーツトマトの生産に奮闘しています。今後は、規格外品の2次加工品(ドライ、パウダー、ビール、酢)の販売にも力を注ぎます。

MKファームのフルーツトマト(キトウさん提供)
持続性が高く、小さくても強い農業を
キトウさんご夫妻は栽培開始に当たり、「農業には計り知れない可能性がある一方で、リスクや課題も多くあることを研修で実感しました。それでも新たな価値を創造し、持続可能な農業を目指したい。「挑戦心」を持って、これからの道を切り開いていきたい」と意気込んでいます。以下はMKファームが目指す農業の理念です。
「おいしい」「幸せ」を届ける~ お客さまと自然と地域と共に~
農業者としての責任と誇り
自分たちの手で育てた野菜を通して「食卓を支える」という使命感を持ち、安心安全な食材の生産をする
自然との共生
農業は天候や環境との戦いであり、同時にそれを生かす仕事でもある。自然の中で働き、調和をしながら営農をする。
地域とのつながりを大切に
農業者、生活者として地域の人々との関わり、地域コミュニティーの一員としての役割を果たし社会貢献をする。

農作業中のキトウさんの夫(キトウさん提供)
就農した今の気持ちをお聞きしました
キトウメグミさん:2020(令和2)年から移住を考え始めて、ようやく就農まで来ました。この5年を振り返ると正直、感無量です。でも移住をすることがゴールではありません。これからがスタートなのだという新たな気持ちです。
いよいよ栽培開始となります。ハウス栽培なので設備の設計や養液の管理、病害虫対策などさまざまありますが、研修で学んだことを実践していきたいと思います。自分で育て収穫したトマトを食べるのが今はとても楽しみです。

キトウさんご夫妻 MKファームにて(キトウさん提供)
キトウさんは明確に就農の目的を持っておられたので、平塚市の研修でも実務的な質問が多く、ここで学び知識を得て帰るという強い姿勢を感じました。一家で埼玉県から北海道へ移住するのは簡単なことではありませんが、家族でじっくりと話し合い、準備も丁寧に行い、移住と就農を実現したことに敬意を表します。また、気候変動や環境、ジャストラ・ゼロカーボンなどへの関心も強く、公共性の高さも感じます。下川町の移住者の受け入れ態勢の充実や当地の魅力も移住を決意した大きな要因です。
キトウさんご一家のますますのご清栄と下川町の繁栄をお祈りします。
(編集長)