北海道有数の農産地でぶどう栽培、稲作を学ぶ~北海道・岩見沢市

いわみざわ公園見晴台展望デッキからの岩見沢市全景
いわみざわ公園見晴台展望デッキからの岩見沢市全景

 北海道岩見沢市は、札幌市から東へ約40キロと通勤圏にあるが、石狩平野の美しい田園風景の中に存在する。農業も盛んで、国内有数の米、タマネギの栽培地として知られる。空知型輪作と呼ばれる作物の連作障害を防ぐ対策やICT技術を活用したスマート農業の先進地域でもある当地で、1次産業や農業実務を学ぶ現地研修を取材した。研修は2021年10月25日から11月5日までのおよそ2週間で、参加者(男性3名、女性1名)は、ワイン用のブドウ栽培や米作りの実務体験を学んだ。

紅葉が進む岩見沢市内の利根別原生林
紅葉が進む岩見沢市内の利根別原生林

石狩川水系の豊富な水と広大な平野

 岩見沢市は北海道の中でも雪が多く、年間の寒暖差が大きい。この気候が果樹の生産に適しており、ワイナリーの設立や醸造用のぶどう栽培が盛んにおこなわれている。また、石狩川水系の豊富な水と広大で肥沃な土地を生かし、北海道随一のコメ生産地となった。コメ以外でも、白菜、タマネギ、小麦、大豆、カーネーションなどの野菜、花きも道内屈指の生産高を誇り、一戸当たりの農地も増加傾向にある。

 りょうこさん(仮名)は、2009年に本州から岩見沢市に夫婦で移住し、12年からワイナリーを始めた。約10ヘクタールの畑で醸造用のぶどうを栽培している。「岩見沢は寒暖差が大きく、この土地のぶどうは私たちが求める酸味のあるワインを作ることができます。害虫や天候の影響、休みがあまり取れないなど大変なところもありますが、出荷を楽しみにしてくれるお客さんもいます」とワイン作りの苦労と喜びを語る。

りょうこさん所有のぶどう畑
りょうこさん所有のぶどう畑

 倉知修平さんは、約40ヘクタールの農地で米、小麦、大豆、トウモロコシ、ひまわりなどを栽培している。「少ない人数で栽培するのは大変ですが、米の収穫を待ってくれておいしいと言ってくれる人がいるのが嬉しい。農業を通じた研修やアルバイトに来てくれる人いて、若い人と交流できるのも楽しいです」と話す。

倉知修平さんと倉知さん所有の小麦畑
倉知修平さんと倉知さん所有の小麦畑

ぶどう畑の手入れ作業

 今回の研修では、りょうこさん所有のぶどう畑で収穫後に土壌を整える肥料の散布やぶどう棚のメンテナンス作業を体験した。肥料散布機を背負ってぶどう畑をまんべんなく往復し、肥料を散布する。また、棚の支柱を手入れするなどの作業を研修参加者2人が分担して行った。「ちょうど収穫が終わったところ。今は一番地味な作業を行う時期でごめんね」とりょうこさんは言うが、参加者からは「北海道の農業を知りたかったのでこういう実際の作業は楽しい」という声が上がった。この畑では赤ワイン用のピノ・ノワールという品種を栽培している。葉の紅葉が青空に映え美しい。

ぶどう畑の肥料散布
ぶどう畑の肥料散布
ぶどう棚の手入れ
ぶどう棚の手入れ
収穫後に残っていたぶどう
収穫後に残っていたぶどう

籾米の乾燥機の清掃作業

 倉知修平さん所有のコメのもみ乾燥場では、大規模農家向けの巨大な遠赤外線乾燥機を使用している。乾燥の工程中に大量に出るもみの破片は、手作業で清掃しなければならない。研修生たちは破片が散乱しないようにシートを敷き、丹念に集め、廃棄する作業を行った。これも地味な作業だが、参加者の一人は「今までこうした実際の農作業をしたことがなかったので新鮮です」と熱心に取り組んでいた。

倉知さん所有のもみの乾燥機と乾燥作業を終えて出荷を待つ1トンの米袋
倉知さん所有のもみの乾燥機と乾燥作業を終えて出荷を待つ1トンの米袋
乾燥機から出るもみの破片をていねいに集める研修参加者
乾燥機から出るもみの破片をていねいに集める研修参加者
作業を終え帰路に着く倉知さんと研修参加者
作業を終え帰路に着く倉知さんと研修参加者

農業と関わっていきたい

 3人の参加者に今回の研修に参加した経緯や今後の展望などを聞いた。

遠山隼多さん(愛知県出身、23歳)

―プログラムへの参加のきっかけを教えてください。

 北海道の農業のやり方を知りたかったのと、農家と知り合いたかったことです。

―実際に現地で参加してみて、いかがでしょうか?

 楽しくて面白い毎日です。肉体的に厳しい時もありますが、農家さんとの交流が楽しいのでつらくありません。

―これからやっていきたいこと、展開していきたい方向性は?

 今回の体験であらためて農業の可能性を感じ、具体的に農業と関わっていきたいと思いました。

水野皓平さん(埼玉県出身、25歳)

―プログラムへの参加のきっかけを教えてください。

 以前から生物や農業に関心がありました。農業とは関連のない業種に就職していたが、農業との接点を見つけたくてこの研修に参加しました。

―実際に現地で参加してみて、いかがでしょうか?

 期待通りで、それぞれのプログラムを新鮮で楽しく感じました。自分はやはり農業を好きだったんだと確信しました。

―これからやっていきたいこと、展開していきたい方向性は?

 農業に仕事として関わりたいと思います。農業は幅広いので、これから何をすべきか考えます。

中嶋重明さん(札幌市出身、22歳)

―プログラムへの参加のきっかけを教えてください。

 テレビの農業関係の特集を見て、自分も農業に参加したいと思いました。また、少人数で広大な農地を運営している様子を見てみたいと思い応募しました。

―実際に現地で参加してみて、いかがでしょうか?

 体力がないので、バテた日もありましたが、テレビでも見たことがないことや本来の農業を経験できてよかったと思います。

―これからやっていきたいこと、展開していきたい方向性は?

 農業を1つの将来として考えるようになりました。農業は肉体的にはきついが、楽しいことを実感しました。

インタビューした参加者たち

(了)

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