(株)和郷 現地で研修する農業の学校 「WAGO AGRI COLLEGE(WAC)」

インタビュー

《聞き手》みらいハウスワークス 渡部郁子さん(以下 渡部)
本日はよろしくお願いいたします。まずは「株式会社 和郷」の事業内容を教えてください。

株式会社 和郷 ナレッジバンク事業部 髙橋さん(以下 髙橋)
よろしくお願いいたします。株式会社 和郷は1991年にスタートした会社で、本社は千葉県香取市にあります。30年以上にわたって農業者の集合体として多岐にわたる事業を展開しています。

株式会社 和郷の原点となる組織として、「農事組合法人和郷園」という専業農家の組合組織があります。生産者約100戸が組合員となり、地域の農産物を出荷するという、専門農協のようなグループです。株式会社 和郷は、マーケットのニーズに合わせた契約販売をもとに、年間を通じて和郷園生産者の農産物を仕入れ、青果流通や加工流通などを行う販売会社としての役割を担っております。例えば野菜の冷凍工場、カット工場、セミドライ工場、フリーズドライ工場など、様々な野菜加工工場を備えております。加工を加えることにより、契約栽培で生産された野菜を余すところなく川下に販売していくという役割を担っています。

近年では、スマート農業、アグリテックの技術を確立し、需要に応じた施設栽培、植物工場拠点の拡大に取組み、年間を通じて安定した農産物を、全国の量販店や生協など様々なお取引先様へ流通させていただいております。

渡部
地域の事業体が集まって、工場をいくつも備えているからこそ野菜を余らせずにすべて使い切る、というような取り組みができ、さらにスマート農業も取り入れ、幅広い活動をされているのですね。そんな中で、髙橋さんがご担当されているナレッジバンク事業部というのはどのようなことを担当していらっしゃるのでしょうか?

髙橋
ナレッジバンク事業部は、主に3つの事業を運営しております。ひとつはコンサルティング部門です。全国の民間企業、農家、自治体の皆様から様々な課題解決のご要望を受けて、我々のチームが全国の現場へ向かい、食と農業での経験値や知見をもとに、必ず結果に結びつく支援させていただいております。

2つ目は千葉県成田市で、日本航空さまと一緒にいちご狩りや年間を通じた収穫体験ができる観光農園、地産地消を目的とした古民家風の農家レストランの運営を行っております。

3つ目は、成田市のおとなり、香取市にある13ヘクタールの自然公園「橘ふれあい公園」を自治体からの指定管理として管理、運営しております。この3つがナレッジバンク事業部の主な3つの役割です。

渡部
ありがとうございます。では、髙橋さんがどのような経緯で、ナレッジバンク事業部を担当されているのか、教えていただけますか?

髙橋
私はもともと、和郷グループの代表者である木内と高校時代の同級生なんです。木内は30年かけて和郷グループを作ってきたわけですが、その間、私は総合飲料メーカーに就職し、飲食店やホテル、商業施設などの3次産業であるサービス業の開発を行ってまいりました。その後、起業をし、自らが実践者としてレストランビジネスと外食コンサルティングをスタートさせました。

木内とは香取市の「THE FARM」いう農園リゾートを開発する際に一緒になり、和郷グループでの業務をスタートしたのがきっかけです。和郷グループにはたくさんのご相談が毎日のように届きます。農業の軸だけではなく、観光、飲食、地域、体験、商品、就農、流通など多岐にわたるご相談があるため、それをとりまとめる部署として、このナレッジバンク事業部が2012年に立ち上がりました。

渡部
私も「THE FARM」さんには取材で何度もお邪魔させていただいております。農園リゾートという新しいコンセプトで、収穫体験が楽しめるほか、グランピング施設、レストランや温泉施設などがあり、どんどん拡大していらっしゃいますね。髙橋さんが関わっていらっしゃるとお聞きして驚きました!
では、そんな株式会社 和郷が今年度から参画する事業について、概要を教えてください。

髙橋
はい。私たちは今まで全国各地で様々な農業に関連する課題解決に関わってまいりました。その中で特に、新規就農に関する様々な事業者様の課題に対して、我々がこれまで経験してきたことを研修という形でお伝えしていきたいと思ったわけです。

我々も全国に様々な拠点があり、そこで新たな雇用について取り組んでまいりました。その今まで培ってきたこと、経験してきたことを、シンプルにお伝えしていくことが、我々が地域に対してできることだと思っております。

今回は様々な地域で、参加者にその地域の農業が持っている課題を一緒になって体感していただくことがまずひとつ。もうひとつは、地域の課題は農業という仕事に関わることだけではなく、人と人とのつながりや環境の整備などが必要なことも多々あるため、自治体の協力を得ることが必要な場合もあり、そういった部分も含めて地域のことを知っていただくプログラムにしていけたらと考えております。

渡部
新規就農に特化したプログラムということですね。ありがとうございます。ではプログラムの具体的な内容についてはいかがでしょうか?

髙橋
プログラムは16日間で、大まかに4つの流れで組み立てております。

まずは、ウェブ形式の「農業基礎講座」を開催します。次に、先ほど話に出てきた香取市の「THE FARM」にて合宿を行います。また、香取市に点在する圃場や施設栽培拠点、野菜冷凍、カット工場などの視察を通して、和郷の農業の取組を視察研修していただきます。そしていよいよ、全国7地域で展開する研修に参加していただきます。そこまですべてを終えた後にアフターフォローを予定しております。

今回のこのプログラムには「和郷アグリカレッジ 」という名前をつけさせていただきました。今回の研修を教育部門の事業としてとらえながら、その後のアフターフォローをしっかりと行い、参加した方お一人お一人の要望に応じた進み方を支援していく計画です。

渡部
では、どんな方々に参加してほしいと考えていらっしゃいますか?

髙橋
農山漁村と言われる地域に興味を持っている方、地方の暮らしをしてみたいという方にぜひプログラムをご検討いただきたいと思います。なおかつ、農業のありかた、農業界での働きかたに興味があるという方に、しっかりと私たちの経験を伝えていきたいと思っています。

まずは本年度、80名でスタートする予定です。その先の目標は、全国47都道府県の自治体の皆様と連携して、地域に興味のある農家の方、農業法人の皆様と、就農に興味のある方を結び付けていきたいと思っています。

渡部
この事業を通して、髙橋さんが思い描く未来はどんなイメージですか?

髙橋
基本的に少子高齢化が進み、農業界ではこの先、農業者の数は黙っていれば減っていきます。一方で、農業界では規模を拡大する農業者の経営体は増える傾向にあります。個の農業を否定することではなく、この動きは、我々が進んできた道と合致する動きでもあるので、そういった取組の方法や考え方、仕組みを全国に伝えていき、我々の世代が次の世代に、バトンを渡していかないといけないという想いがあります。

どうすれば農業界でより多くの利益を上げられるのかということを真剣に伝えていきたいですし、そのためにはやはり農業者同士の情報の共有やつながりが非常に大切だと僕は思っています。さらに、自治体の支援も必要だと考えています。そういった情報をお伝えし、どうアウトプットしていくのか、一連の流れをいっしょに考えていきたいと思っています。

今後、プログラムの経過状況や参加者の様子など、楽しみにしております。ありがとうございました。
https://wac.wago-knowledgebank.com/
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株式会社 和郷 ナレッジバンク事業部 髙橋さん
聞き手:渡部郁子さん(株式会社みらいハウスワークス)
当インタビューは、2024年8月1日に行いました。