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ハレノヒ(株) 「地域の課題を知り、解決に向けて活動するプロジェクト~農村発見リサーチ~」

ハレノヒ(株) 「地域の課題を知り、解決に向けて活動するプロジェクト~農村発見リサーチ~」

ハレノヒ株式会社 代表 赤井田幸男さん
ハレノヒ株式会社 代表 赤井田幸男さん
 今回取り組む事業について、農業を通じて地域課題解決をめざすハレノヒ株式会社 代表 赤井田幸男さんにお話を伺いました

《聞き手》みらいハウスワークス 渡部郁子さん(以下 渡部) 今回お話を伺うのは、ハレノヒ株式会社の代表 赤井田幸男さんです。よろしくお願いします。まず初めに、ハレノヒの事業内容についてお話を聞かせていただけますか?

ハレノヒ株式会社 赤井田幸男さん(以下 赤井田)
 われわれは農業の分野で、主に地方都市の活性化、人口減少や経済活動の問題、基幹産業の衰退といった地域の課題に対して、市場の拡大や新たな用途開発など、これまでの手法を刷新し、新しい価値を生み出し解決していくという取り組みを行ってきました。
 会社を立ち上げて9年目です。立ち上げた当初は、もう1人の飲食店経営者と一緒に、農産物と飲食店を結びつける事業も行っていましたが、現在は中山間地域の農業に特化して、コンサルティングにとどまらず複合的な事業を行っています。

渡部
ありがとうございます。赤井田さんはもともとJICA(国際協力機構)での活動経験があるということで、海外戦略や輸出などの事業を得意とされていると伺いました。

赤井田
 はい、海外の中山間地域も日本と同じ課題を抱えています。現地の人材だけでは解決できない課題が山積みです。例えば、途上国では外資によるプランテーション(大規模農園)で開発が行われた結果、小規模農家は所得が低く、地方の農業従事者が希望をもって農業を続けていくことができない状況になっています。

渡部 なるほど、そういった現地だけでは解決できない問題を抱えている地域を助けたい、というのが赤井田さんの思いなのですね。では、今回の事業のコンセプトについて教えてください。

赤井田
 地方の中山間地域には課題が非常に多いと感じています。その課題をどのように解決できるのか、一緒に考えて行動できるメンバーを探す、というイメージで今回の事業を組み立てました。地域が抱えている課題は多様化しているので、その一つ一つに注目して、それに見合った人材を選ぶという方法を進める一方で、ありがたいことに多様な人材が集まっていますから、その地域の「アベンジャーズ」みたいな団体を作れたらいいな、と考えています。

渡部 アベンジャーズですか。そうすると、いろいろな能力を持つ人たちが集まってより大きな力を生み出していくというイメージでしょうか。

赤井田
 そうですね、いろいろな人材が集まって、いろいろな考え方があり、そのチームの得意とする形で課題を解決する手法を見つけて、実際に試してみる、というところまで今回のプログラムで取り組みたいと考えています。僕も現段階では未知数ですが、うまくいけば継続的な支援活動につながるのではないかと考えています。

渡部 ありがとうございます。では赤井田さんが考える今回のプログラムのゴールのイメージを教えていただけますか?

赤井田
 地方の人材だけでは、デジタル化や商品のPRといった分野で難しい部分があると感じています。取引の拡大に向けてECサイトを作るなど、地方でも商圏を拡大できる仕組みを立ち上げることができれば、人口が少ない地方であっても売り上げを伸ばすことができます。
 売り上げ拡大のためには、その商品の魅力を拡大させる人材も必要です。そういった人材をうまくマッチングできれば、その地域の魅力を発信できるのではないかと考えます。
 今回の募集では、自分の魅力や得意としていることを記入していただいているので、メンバーの能力をその地域の課題とうまく結び付けることが僕の仕事であると思っています。

渡部 ありがとうございます。ではプログラムの内容について詳しく教えてください。

赤井田
 今回の実地研修は、2泊3日の短期研修を3回に分けて行います。僕は「連続」ではなく「断続」的に地域のことを見てもらいたいと思っています。「連続」のメリットはもちろんあると思いますが、「断続」のメリットの方が大きいと感じています。いったんそこを離れてもう一度行ってみることで、新たな価値が見えたり、季節によって見え方が変わったりする、そういったことから地域の良しあしを深く理解することができると思い、そのような研修プログラムを構成しています。
 全国8カ所で研修を予定していますが、その中から一つご紹介するならば、奈良県吉野町のプログラムです。林業が盛んな地区で、昔から木材のまちとして栄えてきましたし、日本では高級木材として神社仏閣に古くから使われてきました。しかし、この地域は後継者不足が深刻な問題になっています。地元の工場の後継者としてうまく結び付けたいというような話もあります。森林伐採や製材加工工場の様子を見るなど、現場での作業に加えて、対話の中でアイデアが生まれてくるようなプログラムを用意しています。

渡部 現地での作業と対話を重視しているということですね。どのような参加者を想定していますか?

赤井田
 ターゲット層は、就職氷河期世代です。中には大学生や高校生などの若い世代から、50代以上の世代からの応募もあり、さまざまな世代を取り入れることで、いろいろなアイデアが出ると考えています。
 できるだけ現場で、現地の方々との交流を通して、課題に向き合っていけるようにと考えています。どちらかというと座学よりも、現場で作業をしながら、対話を通していろいろなアイデアが生まれてくるのではないかと期待しています。
 僕は移住者を増やすことだけが目的ではないと思っています。地域を何とか助けていきたいと思う人が増えていくことが重要だと思っているので、移住に限らずその地域に実際に触れることで、その地域の良さを感じながら自分の中のスキルを生かしていける、そういう人材をつないでいこうと思っています。
 今回の事業で選んだ8カ所というのはいずれも、課題をなるべく早く解決したいと考えている地域なんです。今すぐ人を必要としているところだし、だからこそ参加者にそれだけ熱い想いで接してもらえると考えています。今やらないと間に合わないという思いがあるからこそ、来てくれた人にいろんなことをやってもらえる地域だと思います。

渡部 座学は少なめ、という印象を受けましたが、事前研修ではどんな取り組みを予定していますか?

赤井田
 実地研修の前に、ウェブでオンライン会議を開催し、地域の職員の方や大学の先生を交えて、地域の課題について取り組むという機会を設けています。そこで課題について学び、その後3回の実地研修を通して答えを見つけていくというイメージです。実地研修の後、最後にまたウェブで集まって、参加者各自が考える課題への回答について発表するという形を考えています。

渡部 では最後に、プログラムに参加したいと考えている方へ、メッセージをお願いします。

赤井田
 今回、応募していただくと書類審査と面接があります。応募してくる人は当然、熱意がある人だと思いますが、ただの熱意だけではなくて、なぜこれをやろうとしているのか、といった自分の「想い」を持っている人、その「想い」に注目したいと考えています。

 そして、日本の中山間地域や地方農業がどういう状態なのか、現状を理解してもらうことも大切だと思っていますので、今の日本に必要なことや世界の情勢などについて僕からもお話させていただきます。
 今回、地域のことを動画で理解していただきたいと思い、芸人さんが地域を訪問しインタビューをする動画を作りました。ぜひご覧になっていただき、現地の様子を実際に確認してもらえたらと思います。

渡部
8地域のうち、募集は残すところ奈良県吉野町のプログラムのみとなりました。この8地域のプログラムでそれぞれのアベンジャーズたちがどんな解決策を生み出していくのか、今後も進捗を楽しみにしております。ありがとうございました。

https://farming-discovery.org/
ハレノヒ株式会社 インタビュー:代表 赤井田幸男さん
聞き手:渡部郁子さん(株式会社みらいハウスワークス)
当インタビューは、2022年9月14日に行いました。
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