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(特非)サービスグラント 「困ったときに助け合える地域の仕組みづくり~ふるさとプロボノ~」

(特非)サービスグラント 「困ったときに助け合える地域の仕組みづくり~ふるさとプロボノ~」

特定非営利活動法人サービスグラント 代表 嵯峨生馬さん / 担当 岡本祥公子さん
特定非営利活動法人サービスグラント 代表 嵯峨生馬さん / 担当 岡本祥公子さん

《聞き手》みらいハウスワークス 渡部郁子さん(以下 渡部) 今回お話を伺うのは、特定非営利活動法人サービスグラントの代表、嵯峨生馬さんと、岡本祥公子さんです。よろしくお願いします。まず初めに、サービスグラントという団体についてご紹介いただけますか?

特定非営利活動法人サービスグラント 代表 嵯峨生馬さん(以下 嵯峨)
 サービスグラントはNPO活動を支援する中間支援型のNPO法人です。私たちは、プロボノとして活動したい人とサポートを必要とする団体とをつなぐ役割をしています。プロボノというのは、職業を通じて培った経験やスキルを生かして、社会課題の解決に寄与する活動のことで、ボランティアの一種です。
 活動自体は2005年から始めて、これまでに7500人余りの人がプロボノとして登録し、約1200件のプロジェクトを進めてきました。グラントは英語で「助成(金)」という意味があります。つまり、団体名の「サービスグラント」とは、お金ではなく「サービスによる助成」という意味です。経験スキルや専門知識などお金とは違った支援を、社会活動に取り組む団体に提供しています。

渡部 プロボノという言葉を日本で一般化させたのはサービスグラントさんだと感じています。プロボノワーカーの登録が7500人というのは驚きました。では、「ふるさとプロボノ」とは、どんな取り組みなのでしょうか。

嵯峨
 都市部の、ある意味潤沢な「人」を、どんなふうに地域の力にしていくか、地域づくりに生かしていくための方法として、「ふるさとプロボノ」を始動しました。そもそも、サービスグラントの活動というのは、どうしてもビジネスパーソンの多い場所、大都市に集中しがちで、私たちも東京と大阪に拠点を構えて活動してきました。それが、(コロナ禍により)オンラインで全国どこでもつながれるようになったことや、私自身がもともと熊本県や静岡県で地域活動に参加してきた経験があり、もしかしたら地域の人たちの方が(都会の団体に比べて)よりサポートを必要としているのではないか、と感じたということもあります。
 通常のプロボノと基本的には変わらないのですが、少なくとも1回は現場に行ってその土地を踏みしめてみる、現場の空気や肌感覚など、五感を使って地域を知る、感じるという部分がすごく大事だと思っています。地域の情報を得て、地域への愛着を持っていただいて、地域の支援に役立てるというプログラムになっています。昨年から実施していますが、今年度(2022年度)は農林水産省の事業として、農林水産業体験を織り込んだプログラムを組み立てています。

渡部 経験やスキルをもったプロボノワーカーの能力を地域につなぐ、ということですね?

嵯峨
 実は、「ふるさとプロボノ」は人でもモノでもカネでもなく、「情報」を提供するものだと考えています。地域づくりを一つの経営というふうに考えたとき、経営資源の四つ目としての「情報」です。これは単にネットで検索して調べられるような「情報」ではなく、地域が自分たちでより発展していけるような「客観的な視点」や「次に進むべき道筋」であったり、「詰まっているところがほぐれる何か」であったり、そういったことを提供できるのではないかと考えています。

渡部 なるほど、「人」でも「能力」でもなく「情報」とは、とても面白い視点だと思います。では、「ふるさとプロボノ」の具体的な内容について教えてください。

特定非営利活動法人サービスグラント 岡本祥公子さん(以下 岡本)
 「ふるさとプロボノ」は、農林水産体験がセットになった地域交流型プログラムです。一つのプロジェクトの期間がおおよそ1カ月半から2カ月。これは現地滞在も含め、成果物の提出までのトータル期間です。22-23年度の2年かけて20件を予定しています。1泊2日から2泊3日の現地滞在を数回行い、地域の現状をリアルに見て感じることができるという点が特徴です。

渡部 参加者として応募できるのは、何らかの職業スキルを持つ方ということですね?

岡本
 本業をお持ちの方でしたらどんな方でも応募可能です。応募は、オンラインの社会参加プラットフォーム「グラント」を活用しています。これまでチーム型でプロジェクトに取り組んできましたが、「グラント」では個人単位で参加できる仕組みになっています。まずは登録していただき、説明会への参加をお願いしています。
 また「グラント」は、地域団体の方が直接、「ちょっと人手が足りない」というときに、人手を募集したいタイミングで募集告知を掲載していただくこともできるシステムです。個人の登録者は既に1200人程度いますので、課題解決のツールとして活用していただけたらと思います。

渡部 岡本さんは、「ふるさとプロボノ」プロジェクトの担当をされていらっしゃいます。担当者の視点で「ふるさとプロボノ」の面白さはどんなところでしょうか?

岡本
 日本全国を元気にするという、小さいながらも非常に大事な一つのアクションだと思います。ふるさとプロボノをきっかけにいろいろなストーリーが生まれることを願っています。
 地域団体の皆さまにお伝えしたいことは、地域の課題を外部から応援したいと考えている社会人が実はたくさんいるということです。一生懸命活動しているけれど、なかなか人手が足りないとか、やりたいことに手が回らないなどの行き詰まりを感じているとしたら、ぜひ、「ふるさとプロボノ」を通じて、プロボノワーカーとの新しいつながりを獲得していただき、仕組みとして活用していただければと思っています。
 社会人の皆さまの中には、地域に関わりたいと思ってもどのようにしたらいいのか分からないと感じている方も多いと思います。その最初の一歩として、プロボノというご自身の経験を生かして地域に役立つという、なかなか仕事では得られない経験の機会が含まれていますので、ぜひ一歩を踏み出していただきたいと思います。まだ見ぬ世界がそこには広がっています。ふるさとプロボノを通じて、地域を越えた仲間づくりのきっかけを提供できればと考えています。

渡部 ありがとうございます。では最後に、嵯峨さんからプロジェクトに託す思いをお聞かせいただけますか?

嵯峨
 今回のコンセプトは「地域をこえて『いっしょにやる』を日本中に。」に決まりました。事業の成果として、地域が自走するというのは理想ですが、人口減少などのスピードたるや、もう止めるのは無理な状況になっていて、相当厳しいと感じています。だから、困ったときに助け合える形を作っていくことが大事かなと。いろいろな関係を都市と地域の中で作っていき、気軽に「力を貸してよ」「手伝うよ」と言える関係を作っていく、そういう地域づくりが広がっていくといいのではないか、とそんな感覚を持っています。新しい担い手たちのつながりづくりというものに一緒にチャレンジしたいと思ってくれる地域の方はぜひ、お問い合わせいただけたらうれしいです。
 また、プロボノとして登録される方のうち半分は、過去にNPO活動やボランティアを経験したことがない方です。プロボノが初めてのボランティア活動であるという方が珍しくありません。
 いま、人生100年時代とかパラレルキャリアなど叫ばれていますが、会社以外の居場所や自分の心のよりどころみたいなものを持つということが求められている時代になっていると感じます。そういった中で「ふるさとプロボノ」で自分にとって特別な地域が見つかるとしたら、人生の宝物を見つけるような体験になるかもしれません。興味のある方はぜひ、参加を検討していただきたいと思います。

渡部 ありがとうございました。この先、2カ年で20のプロジェクトから、たくさんのすてきなストーリーが生まれることを楽しみにしています。

ふるさとプロボノ https://furusato-probono.jp/
グラント https://grant.community/
特定非営利活動法人サービスグラント インタビュー:代表 嵯峨生馬さん / 担当 岡本祥公子さん
聞き手:渡部郁子さん(株式会社みらいハウスワークス)
当インタビューは、2022年9月16日に行いました。
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