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農ライファーズ(株) 「都会での仕事を続けながら農的暮らしを始めてみる~複業村の農Xプログラム~」

農ライファーズ(株) 「都会での仕事を続けながら農的暮らしを始めてみる~複業村の農Xプログラム~」

農ライファーズ株式会社 代表 井本喜久さん
農ライファーズ株式会社 代表 井本喜久さん
「株式会社The CAMPus BASE」は、2022年11月11日に「農ライファーズ株式会社 」へ社名を変更しました。当インタビューは、2022年9月14日に行いました。
 今回取り組む事業について、農村で複業を成功させる実践型研修を展開する 代表 井本喜久さんと田島旭さんにお話を伺いました。

《聞き手》みらいハウスワークス 渡部郁子さん(以下 渡部) 今回お話を伺うのは、代表 井本喜久さんです。よろしくお願いします。まず初めに、事業内容についてお話を聞かせていただけますか?

農ライファーズ株式会社 代表 井本喜久さん(以下 井本)
 The CAMPus BASEは2018年5月に設立した会社で、農業を目指す方々や農的な暮らしをしていきたいと思っている方々のコミュニティーづくり、スクール運営などを行っています。主な事業は三つ。一つ目はオンラインサロンの運営、二つ目は、「コンパクト農ライフ塾」というスクールの運営。もう一つは地域ブランディング事業として、限界集落の再生などを手掛けています。

渡部 2018年に井本さんが立ち上げたのですね。会社を立ち上げたきっかけは何ですか?

井本
 きっかけは、妻ががんになったことです。僕はもともと、広告業界で企業のブランドづくりや経営コンサルティングなどの仕事に従事してきました。2014年に妻ががんになり、それをきっかけに「人がなぜがんになるのか」ということを調べ始めた際に、病気の要因として「食生活」や「ストレス」などがあると知りました。中でも「食」が特に大切だということを感じたので、「食」の源である農家さんに会いに行くために全国を旅しました。

 それまで「農業はすごく大変だ」という(マイナスの)思いを持っていましたが、農家さんに直接会って話を聞けば聞くほど、「農業は素晴らしい」という思いや「すごく可能性がある」と感じました。今、農業人口はどんどん減少しているし、耕作放棄地は増える一方で、環境問題による温暖化などの自然災害も多くて「気候危機」というようなことも言われています。一般的に「農業は大変だ」と言われている。それはその通りだと思う一方で、逆手に取れば「可能性があるのではないか」と感じました。

 なぜそう感じたかというと、僕は全国を旅する中で、うまくいっている農家さんに会いに行ったからだと思います。話を聞いていると、素晴らしいなと思うことが多くて、その農家さんたちの生き方や考え方、哲学というものを、次の世代に伝えていきたいと思ったし、それが使命だと感じました。だから、農業のかっこよさを伝える有料のWebマガジンを配信することから、事業をスタートしました。
 Webマガジンをきっかけにさまざまな農家さんに会う中で、「これからは小さな農家の営みに価値がある」という気付きを得ました。日本の農地問題を考えれば、大規模な農業よりも小さな農家の営みを担っていく人材が今後増えることの方が面白いし、農業という商売のことだけを考えていくのではなく、農的な暮らしの中に生きるヒントがあると感じたので、そういったメッセージを都会のビジネスパーソンたちに伝える「コンパクト農ライフ塾」というスクールを立ち上げ、今に至ります。

渡部 ありがとうございます。スクールのターゲットを都会のビジネスパーソンにした理由はどんなところですか?

井本
 なぜ都会のビジネスパーソンなのかというと、二つの視点があります。まず、日本では今、副業解禁がどんどん進んでいて、都会のビジネスパーソンたちが、今の仕事を辞めなくても農的な暮らしに関わることができるようになりました。農村に行って新たなビジネスチャンスを見出したり、副業で農村に関わったりしていくことが比較的簡単にできる時代であるということ。そしてもう一つは、農村の活性化という視点で考えると、本質的な解決策として僕は若い力だと思っていることです。大企業が農村を開拓していくというような時代ではなくなり、農村には次世代の力が必要で、個人レベルで面白いことを始めていけると考えています。

渡部 なるほど、都会のビジネスパーソンに向けて「副業としての農業」を提案する、だから今回のテーマが「複業村の農X」なんですね。では、今回のプログラムのコンセプトについて教えてください。 ※プログラム名のみ「複業」の表記としています

井本
 農業人口はどんどん減り続けていて、100万人を切っているという状況ですが、都会で働くビジネスパーソンたちの中には、農的な暮らしを試行する人や「いつか農村で事業をやりたい」と考えている人たちが増えてきているように感じています。そういう人たちに、土と付き合うビジネスを起こしていくことを提案していきたいと考えています。

 時代が変化し、働き方も大きく変化しています。副業を解禁する企業が増えているし、リモートワークも広がりました。テクノロジーを駆使して農村にいても仕事ができるという状態や、今の仕事を続けながら農村で新しいアクションを起こしたり、新しい仕事を生み出したりすることもできる、そういうことがやりやすい時代になったと思います。

 2020年にスタートした「コンパクト農ライフ塾」は、オンラインで100%学べるスタイルです。今まで「農業を学ぶ」といえば、農作物の作り方から学ぶ実践形式が基本だったわけですが、僕たちは「農作物の売り方を学んでいく」という視点でスクールを開催し、売り方を設計して出口戦略について学ぶことで、都会のビジネスパーソンたちが農村に行って新たなビジネスチャンスを作り出すことができるような内容になっています。
 そして、ビジネスについて学んでから、実際に地域の魅力を感じてもらう研修を用意しています。全国各地にある農村の中から、副業に向いている村を選んで、その地域に実際に訪れて農的暮らしを見てもらう研修期間をプログラムに組み込みました。実地研修は全部で14日間です。
 さきほど「農村に若い力が必要だ」と言いましたが、農村では70歳でも「若手」と言われることがあります。それが大げさだとしても、何歳からでも遅くないというのが農業ならではの環境です。都会で働くビジネスパーソンたちは60歳で定年を迎えるわけですから、定年後のセカンドキャリアとしての農ライフという提案はもちろん、20代~50代の若い世代にとっても、人生100年時代における素晴らしい環境だと思っています。

渡部 農業を始めるのに年齢は関係ないということですね。では、プログラムの内容についてお伺いしてもよろしいでしょうか。

農ライファーズ株式会社 田島旭さん(以下 田島)
 はい、では「複業村の農X」プログラムの内容について、私から詳しく紹介させていただきます。
今回のプログラムは大きく分けて三つの研修の場を用意しています。一つは、オンラインで学ぶ農業にまつわる講座です。先ほど井本が説明した「コンパクト農ライフ塾」のアーカイブ動画で、農に関するビジネスについて学んでいただきます。

 二つ目は、地域の魅力をオンラインで学ぶ講座です。実際に現場を訪れる前に、その地域がどのような特徴を持っていて、どのような可能性を秘めているのか、各地域のプレーヤーや市町村に勤める職員の方々などにご協力いただき、オンラインで講座を開催いたします。しっかりと学んだうえで、現地を訪れていただきます。
 三つ目が実地研修です。2泊3日、または1泊2日の現地滞在プログラム、合計14日間の研修の中で、いろいろな人と出会い、その土地の魅力を知り、最終的に自分らしいビジネスプランを作っていただきます。
 今回の研修プログラム候補となっている地域は、全国で5カ所あります。石川県能登町、京都府亀岡市、大阪府豊能町、香川県三豊市、福岡県うきは市の5地域です。
 研修プログラムを行う地域の一つ、例えば石川県能登町は、「山と海と里が響き合う、自然と人が調和するまち」です。農村の暮らしと結び付いた風習や文化が高く評価され、日本で初めて世界農業遺産に認定された町でもあります。里山里海が織りなす豊かな自然風景が広がる地域で、新しいチャレンジを応援する文化もあります。能登町のプログラムでは、ブルーベリー農家や林業従事者、環境教育を行う施設の運営者、実際に都会から移住して農的な暮らしを実践しているコーディネーターなどによる実地研修を予定しています。
 研修プログラムを行う地域の一つ、例えば石川県能登町は、「山と海と里が響き合う、自然と人が調和するまち」です。農村の暮らしと結び付いた風習や文化が高く評価され、日本で初めて世界農業遺産に認定された町でもあります。里山里海が織りなす豊かな自然風景が広がる地域で、新しいチャレンジを応援する文化もあります。能登町のプログラムでは、ブルーベリー農家や林業従事者、環境教育を行う施設の運営者、実際に都会から移住して農的な暮らしを実践しているコーディネーターなどによる実地研修を予定しています。
 また、香川県三豊市は、今、日本で最もローカルスタートアップに適した町であると私たちは考えています。三豊市は、半農半Xの実践者や既に副業に取り組んでいるプレーヤーが非常に多い地域です。香川を代表する「讃岐うどん」の食文化やアートカルチャーが根付いていることから、農業という枠を飛び越えてカフェや宿泊施設などを提供する地域のプレーヤーたちの農的暮らしを感じていただけると思います。
 5地域それぞれに特徴があり、魅力あふれる地域プレーヤーたちに出会うことができます。いずれの地域も2泊3日×4回と1泊2日の現地滞在プログラムがあり、5回目の実地研修ではプレゼン大会を行います。このプレゼンテーションは、研修参加者がこの地でどのように農的な暮らしをするのかを発表していただくものです。

渡部 ありがとうございます。魅力的な地域が5カ所、どの地域も気になります。応募の詳細について教えてください。

田島
 対象者のイメージは、都市部に生活していて副業で農業に関わってみたいという方、今のキャリアや経験を生かしながら農的暮らしを始めてみたいという方、移住や二拠点生活を考えている方、持続可能な暮らしや自給自足の生活に興味があるという方など、幅広く考えています。(エントリー期間は既に終了しています。)
 また、地域ごとに定員があるため、ご応募いただいた方には個別面談の機会を設け、参加メンバーを選考させていただく予定です。

渡部 ありがとうございました。井本さん、最後に農的な暮らしや農業に関わる副業を目指している方々へひと言お願いします。

井本
 全国に魅力的な農村はたくさんありますし、関係人口を増やしていくことはこれからますます大切になってくるだろうと僕は考えています。だから、農村に通う「人」たちが増えることで農村が活性化していけばいいなと思いますし、このプロジェクトで参加者が地域の「人」とつながって縁ができることもまたポイントだと感じています。僕らは面白い縁をどんどんつないでいく存在だと考えています。まずは僕らとの縁をつなげていただき、その一期一会も大切にしていきたいです。そして、プレーヤーの人たちとつながって、プログラム終了後も地域を「心のふるさと」のように感じてもらえたらうれしいです。
https://nou-x.noulifers.com/
農ライファーズ株式会社 インタビュー:代表 井本喜久さん / 田島旭さん
聞き手:渡部郁子さん (株式会社みらいハウスワークス)
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