
《聞き手》みらいハウスワークス 渡部郁子さん(以下 渡部) 今回お話を伺うのは、代表 井本喜久さんです。よろしくお願いします。まず初めに、事業内容についてお話を聞かせていただけますか?
The CAMPus BASEは2018年5月に設立した会社で、農業を目指す方々や農的な暮らしをしていきたいと思っている方々のコミュニティーづくり、スクール運営などを行っています。主な事業は三つ。一つ目はオンラインサロンの運営、二つ目は、「コンパクト農ライフ塾」というスクールの運営。もう一つは地域ブランディング事業として、限界集落の再生などを手掛けています。
渡部 2018年に井本さんが立ち上げたのですね。会社を立ち上げたきっかけは何ですか?
きっかけは、妻ががんになったことです。僕はもともと、広告業界で企業のブランドづくりや経営コンサルティングなどの仕事に従事してきました。2014年に妻ががんになり、それをきっかけに「人がなぜがんになるのか」ということを調べ始めた際に、病気の要因として「食生活」や「ストレス」などがあると知りました。中でも「食」が特に大切だということを感じたので、「食」の源である農家さんに会いに行くために全国を旅しました。
それまで「農業はすごく大変だ」という(マイナスの)思いを持っていましたが、農家さんに直接会って話を聞けば聞くほど、「農業は素晴らしい」という思いや「すごく可能性がある」と感じました。今、農業人口はどんどん減少しているし、耕作放棄地は増える一方で、環境問題による温暖化などの自然災害も多くて「気候危機」というようなことも言われています。一般的に「農業は大変だ」と言われている。それはその通りだと思う一方で、逆手に取れば「可能性があるのではないか」と感じました。
渡部 ありがとうございます。スクールのターゲットを都会のビジネスパーソンにした理由はどんなところですか?
なぜ都会のビジネスパーソンなのかというと、二つの視点があります。まず、日本では今、副業解禁がどんどん進んでいて、都会のビジネスパーソンたちが、今の仕事を辞めなくても農的な暮らしに関わることができるようになりました。農村に行って新たなビジネスチャンスを見出したり、副業で農村に関わったりしていくことが比較的簡単にできる時代であるということ。そしてもう一つは、農村の活性化という視点で考えると、本質的な解決策として僕は若い力だと思っていることです。大企業が農村を開拓していくというような時代ではなくなり、農村には次世代の力が必要で、個人レベルで面白いことを始めていけると考えています。
渡部 なるほど、都会のビジネスパーソンに向けて「副業としての農業」を提案する、だから今回のテーマが「複業村の農X」なんですね。では、今回のプログラムのコンセプトについて教えてください。 ※プログラム名のみ「複業」の表記としています
井本
農業人口はどんどん減り続けていて、100万人を切っているという状況ですが、都会で働くビジネスパーソンたちの中には、農的な暮らしを試行する人や「いつか農村で事業をやりたい」と考えている人たちが増えてきているように感じています。そういう人たちに、土と付き合うビジネスを起こしていくことを提案していきたいと考えています。
時代が変化し、働き方も大きく変化しています。副業を解禁する企業が増えているし、リモートワークも広がりました。テクノロジーを駆使して農村にいても仕事ができるという状態や、今の仕事を続けながら農村で新しいアクションを起こしたり、新しい仕事を生み出したりすることもできる、そういうことがやりやすい時代になったと思います。
渡部 農業を始めるのに年齢は関係ないということですね。では、プログラムの内容についてお伺いしてもよろしいでしょうか。
農ライファーズ株式会社 田島旭さん(以下 田島)
はい、では「複業村の農X」プログラムの内容について、私から詳しく紹介させていただきます。
今回のプログラムは大きく分けて三つの研修の場を用意しています。一つは、オンラインで学ぶ農業にまつわる講座です。先ほど井本が説明した「コンパクト農ライフ塾」のアーカイブ動画で、農に関するビジネスについて学んでいただきます。
渡部 ありがとうございます。魅力的な地域が5カ所、どの地域も気になります。応募の詳細について教えてください。
対象者のイメージは、都市部に生活していて副業で農業に関わってみたいという方、今のキャリアや経験を生かしながら農的暮らしを始めてみたいという方、移住や二拠点生活を考えている方、持続可能な暮らしや自給自足の生活に興味があるという方など、幅広く考えています。(エントリー期間は既に終了しています。)
渡部 ありがとうございました。井本さん、最後に農的な暮らしや農業に関わる副業を目指している方々へひと言お願いします。
全国に魅力的な農村はたくさんありますし、関係人口を増やしていくことはこれからますます大切になってくるだろうと僕は考えています。だから、農村に通う「人」たちが増えることで農村が活性化していけばいいなと思いますし、このプロジェクトで参加者が地域の「人」とつながって縁ができることもまたポイントだと感じています。僕らは面白い縁をどんどんつないでいく存在だと考えています。まずは僕らとの縁をつなげていただき、その一期一会も大切にしていきたいです。そして、プレーヤーの人たちとつながって、プログラム終了後も地域を「心のふるさと」のように感じてもらえたらうれしいです。