インタビュー
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渡部
今日はよろしくお願いいたします。ではまず「NPO法人G-net」の活動について教えてください。 -
NPO法人 G-net 南田修司さん(以下 南田)
岐阜を拠点に活動しているNPO法人です。2001年に創業して以来20数年にわたって、人と地域をつなぐ事業に取り組んでいます。具体的には、大学生のインターンシップや社会人の副業、兼業業、もしくは社会人プロボノなど、多様な人と地域をマッチングしています。
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渡部
南田さんがG-netに参画した経緯を教えていただけますか? -
南田
僕自身は今、2代目の代表を務めています。創業者は岐阜出身で、地元がどんどん衰退していく、商店街がシャッター街になっていく、という状況を目の当たりにし、街のためにできることはないかと考えてイベントを企画し始めたのが立ち上がりでした。
そのうち、自分たちがイベントをやるだけではなく、そもそもそういうことに挑戦する人を増やしたほうがいいのではないかと考えるようになり、街づくりから人づくりという方向に事業がスライドしていき、今の形になりました。
僕自身が関わり始めたのは、16年ほど前。2008年頃で、当時大学院生をしており、たまたま前代表とのご縁で手伝い始めたら、面白くなって、そのまま卒業後も働くようになりました。
大学では教育学を学び、人の成長について研究していたこともあり、地域をフィールドにしながら、人づくりや人材育成に取り組んでいるG-netの活動にとても興味を感じました。そして、その後2017年に代表を継ぐことになりました。
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渡部
ありがとうございます。では今回、この事業に参画することになった経緯について教えてください。 -
南田
数年前からG-netでは、社会人の副業・兼業、もしくは社会人が研修で地域に飛び込む取り組み「ふるさと兼業・シェアプロ 」という事業を行っています。その中で、岐阜だけでなく様々な地域と連携して行うことを試行錯誤していたところ、ちょうど今回の募集を見つけて、主旨とも重なるのではないかと感じ、応募しました。
採択いただいたことで、事業の補助エンジンとしてトライアンドエラーができる部分が大きな価値だと感じています。今年は5地域と連携し、現在計画を進めています。すでに関心を持っていただいている大手企業様もいらっしゃるので、この取り組みがさらにひろがる可能性を感じています。
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渡部
では、プログラム概要について教えていただけますか? -
南田
今年は、北は気仙沼から南は奄美大島までの5地域と連携し、企業が地域をフィールドに社員の育成に取り組む研修プログラムを実施します。研修としての可能性が地域にあるか、人材育成に想いある企業と地域をつなぐコーディネートをしています。
地域でこれまで活動してきた中で、持続可能に人が地域に来続けるとか、課題解決の現場に入り続けるということは、すごく難しいと感じています。多くの地域では、補助があるからこそやれる、みたいなところもあり、補助が永続的に続くわけではないことを考えれば、自立的に続けられる仕組みを検討しなければなりません。財源をだれが負担するのか、補助依存では問題の先送りですし、、課題解決に関わる地域の事業者が負担する、というのも限界がある。
だから、人材の送り出し側となる企業が価値を感じてコストを負担するというモデルがもしできてくるなら、持続可能性に対してひとつ打ち手が増えると考えました。
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渡部
研修先として会社と地域をつなぐというのは、今まであまり聞いたことがないように思います。 -
南田
会社単位でこういった研修をしている企業はあるかもしれませんが、地域側が中心になって企業と地域をつなぐという取り組みは結構珍しい取り組みだと思います。今回やろうと考えているモデルは、ひとつの会社からひとつの地域に何人、というような形ではなく、複数の企業から集まって混合チームがいくつかできる、というイメージのものを想定しています。
都会や企業で学んできたことで地域の課題を解決してやるぞ、というような斜め上からの立ち位置ではなく、その課題を自分も解決したい一人として、当事者目線で関わってくださることを期待しています。研修としてプログラムが終わった後も、定期的に帰ってきて引き続き課題に取り組む、というようなご縁やつながりが生まれたら、それが企業にとって社員たちの学ぶ場所として価値があるものなんだと認識していただけて、継続的に人を送り出すことにも繋がっていくのではないか、とそんなことを目指しています。
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渡部
南田さんがこの事業にかける想いをお聞きしてもいいですか? -
南田
僕が16年以上、地域のひとづくりという取り組みをやってきた中で感じるのは、目の前の一人の学生、または社会人が、明らかに変化していく姿を目にすることができること、成長がぐっと加速する瞬間に日々出会えるということに、この仕事のやりがいを感じます。
また、一人の人が地域に入るのは3か月とか半年など限られた期間ですが、10年とか15年のスパンで見ると、地域や受け入れされる方も大きく変化している。そういう大きな変化を実感できるということが、すごく面白いとも思っています。
この事業は、人材と地域の双方が変化・成長するきっかけを生み出し、人材育成と地域課題解決を両立する事業として、育てていきたいと考えています。持続可能なモデルを本事業を通じて試行錯誤することで、新たな仕組み作りを進めていきます。
8月下旬には研修がスタートし、まずは各地域に飛び込む前に、一度岐阜に来ていただいて、その後9月以降の約4か月で5地域を訪れ、様々な地域の課題解決に挑戦していただく予定です。様々な挑戦が地域で生まれることを楽しみにしています。
この先の中間報告などもこちらのサイトで紹介してまいりますので、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
ありがとうございました。
■ふるさと兼業越境研修プログラム「シェアプロ」とは
ふるさと兼業越境研修プログラム「シェアプロ」は、地域中小企業・団体の事業推進・経営革新プロジェクトに期間限定で取り組む、越境学習をベースとした実践型人材育成プログラムです。大手企業社員等がチームを組んで地域課題解決、地域創生の現場に越境し、新たなイノベーション創出に取り組むことで、人材の成長と地域課題解決を両立することができます。
※越境学習とは
所属する組織の「枠」を超え、双方を行き来することで、視野が広がり、価値観の揺さぶりや葛藤を経て、知の探索や内省を深めることです。「自分にとってのホームとアウェイを行き来することによる学び」と法政大学大学院石山恒貴教授は定義されています。
■副業兼業・プロボノプラットフォーム「ふるさと兼業」とは
大手企業や都市部で活躍しながら、愛する地域や共感する事業に関わりたいと考えている人材が、地域中小企業の経営革新や自事業推進にプロジェクト単位でコミットできる副業兼業・プロボノのマッチングプラットフォームです。全国26地域の地域活性・中小企業支援に取り組む企業・団体と連携して運営しています。マッチング支援だけでなく、プロジェクト設計から伴走までを専属のコーディネーターがトータルでサポートする仕組みが特長で、2021年には「HRアワード2021」にて、プロフェッショナル部門に入賞しています。
ふるさと兼業:https://furusatokengyo.jp/
聞き手:渡部郁子さん(株式会社みらいハウスワークス)
当インタビューは、2024年8月5日に行いました。