おためし農業.com

“研修生の今”を追う

“研修生の今”を追う

− 第8回−みやま市の農業を知り体験できる企画を

《はじめに》

 読者の皆さまこんにちは。第8回目となる当コラムでは、研修事業者の九州のムラ様の主催で、2023(令和5)年10月~11月に福岡県みやま市で行われた研修に参加した竹森祐子さんの今を追いました。竹森さんは、24(令和6年)3月からみやま市の地域おこし協力隊として活動をしています。
 竹森さんにみやま市に協力隊員として移住する経緯や思い、現在の活動、移住を検討している方へのアドバイスなどをお聞きしました。インタビューの回答は、移住を考えている方、移住を受け入れる自治体や地域の担当者の方々双方に取りまして貴重な視点の提供とアドバイスとなっています。研修時のレポートと共にぜひご高覧ください。
2023年の研修時に受け入れ先の「大黒園」合同会社代表の堤宏子さんと
2023年の研修時に受け入れ先の「大黒園」合同会社代表の堤宏子さんと

《はじめに》

 読者の皆さまこんにちは。第8回目となる当コラムでは、研修事業者の九州のムラ様の主催で、2023(令和5)年10月~11月に福岡県みやま市で行われた研修に参加した竹森祐子さんの今を追いました。竹森さんは、24(令和6年)3月からみやま市の地域おこし協力隊として活動をしています。
 竹森さんにみやま市に協力隊員として移住する経緯や思い、現在の活動、移住を検討している方へのアドバイスなどをお聞きしました。インタビューの回答は、移住を考えている方、移住を受け入れる自治体や地域の担当者の方々双方に取りまして貴重な視点の提供とアドバイスとなっています。研修時のレポートと共にぜひご高覧ください。
2023年の研修時に受け入れ先の「大黒園」合同会社代表の堤宏子さんと
2023年の研修時に受け入れ先の「大黒園」合同会社代表の堤宏子さんと

《竹森祐子さんをご紹介します》

 仙台市出身の竹森さんは、東日本大震災を体験して息子さんが口にする食べ物のことを考えるようになり、遠方から野菜を取り寄せるなど農業に対する関心が強くなりました。一昨年に(みやま市隣接の)八女市で九州のムラ様が主催したキウイ農家の研修に参加しとても楽しかったので、みやま市の研修にも参加。みやま市との縁が生まれました。震災で体験して海の怖さを知り、その怖さのイメージが少ない当地域で、半農半Xで農業をしたいと移住を決意しました。

《竹森さんへのインタビュー》

1)昨年の研修を経てみやま市の地域おこし協力隊に応募し、赴任するに至った経緯や思いについて教えてください。

―みやま市の研修参加後に応募した隣接市の地域おこし協力隊(2案件)には選考されませんでしたが、息子と話し合い2023年12月31日で退職(仙台市の駅ビル施設管理)を決め、12月中にみやま市へ引っ越そうと準備を開始しました。住居は、みやま市の研修でお世話になった北原さん(北原園芸)の知人の古民家アドバイザーの山城さん(みやま市在住)から紹介いただいた古民家の物件です。
 24年1月初旬にみやま市の地域おこし協力隊の募集情報を知り応募。1月末に合格通知をいただき、2月22日みやま市民となりました。

2)みやま市に移住することを決めた理由と思いについて教えてください。

―1.研修時にみやま市役所の農林水産課さんと何度も直接お会いし、親身な行政だと感じたこと。
 2.みやま市の研修受け入れ農家さん2軒(大黒園さん、北原園芸さん)の常により良くして前へ進もう!楽しくやろう!という考えに共感したこと。大黒園さんのミカン選果、販売、加工を担うコクヨウさんは、社長さんはじめ全員女性!でパワフルなところに憧れたこと。
 3.古民家アドバイザー山城さんの古民家に対する熱い情熱と愛情に感動したこと。大好きな大道谷の里(一昨年の八女市の研修の受け入れ先)から一山お隣という距離で安心感があったこと。
ーなどが理由です。

3)地域おこし協力隊に応募を決めた理由について教えてください。

―息子が医学科5年生で卒業前の時期であり、1人親で貯蓄が無いーという状況。息子の学業に影響せず移住しようと月額給与が確保できる協力隊に応募しました。
 また、和歌山県由良町の先輩隊員のアドバイスで「協力隊という肩書があると地域の人も安心して受け入れてくれる」という言葉も決め手となりました。

4)みやま市の地域おこし協力隊で予定されている任務や何をやりたいか、赴任にあたっての思いなどを教えてください。

―清水寺(注参照)の麓に位置する福岡県みやま市農林漁業体験実習館「清水山荘」(きよみずさんそう)の管理、宿泊対応、PRに伴う企画運営が任務です。程よい高低差で九州オルレコースに含まれる清水山荘の気持ち良さを知ってもらえるよう頑張ります!
 みやま市の農業を知って体感できる企画も市役所へドンドン提出し実現できるよう、任期3年目の先輩のご指導とOBが残された企画書で勉強中です。そして何より私自身が「みやま市」を楽しんで満喫することを大切にします!
〈注〉清水寺は、清水山の中腹に最澄(伝教大師)が開いた天台宗の古刹(こさつ)で、大坊庭園は室町時代に禅僧の雪舟が造ったといわれ、国指定名勝に選定されている。
みやま市の地域おこし協力隊に赴任後、竹森さんは同隊のSNSに日々投稿 している(竹森さん提供)
みやま市の地域おこし協力隊に赴任後、竹森さんは同隊のSNSに日々投稿 している(竹森さん提供)

5)移住する方へのアドバイスをお願いします。

―行政の施策では、東京圏からの移住、若年層や夫婦、小さいお子様連れが優遇されますが、政令指定都市からの50歳超えの年齢では補助はゼロ。私が移住するためには協力隊制度は、神様からのギフトです。収入が確保されているという安心感は、見知らぬ土地へ移住して生活を楽しむためには重要だと実感しています。
 このたび移住を期に原付きバイクのデビューをしました。51歳で初バイク!バイクショップの方は驚かれておりました・・・。車両とは違い空気や太陽の熱を直接感じながらの移動は「冒険」感が増して面白いです!!人や車両が少ない田舎だからこそのバイクデビュー!オススメです。

6)移住した今の気持ちはいかがでしょうか。

―私1人の意思や希望、頑張りでは移住に至らなかったと強く感じます。
 周りの色々な方々の地域への愛情、農業への愛情、古民家への愛情からくる思いやりや優しさの賜物だと感じています。息子にも感謝しています。(大学の)卒業前なのにお母さんの人生だからいいよと。ありがとう!私自身は出たとこ勝負の性格なので、周りの皆様が素敵な人だからこそ移住できました。楽しく生活できています!
担当の清水山荘のSNSへ投稿(竹森さん提供)
担当の清水山荘のSNSへ投稿(竹森さん提供)

《編集後記》

 竹森さんはみやま市に移住する経緯や思いを率直に語ってくれました。インタビューから、新しい土地で新たな人生を歩んでいく弾む気持ちが伝わってきます。移住を検討している方、移住者を受け入れる側の自治体の皆様双方にとって参考になる点が多数ありました。
 まず、みやま市に移住を決めた理由について竹森さんは、「親身な行政だと感じたこと」と回答しています。この点は移住者共通の理由といえます(第4回目コラム参照)。次に地域おこし協力隊が移住者の受け入れに有効な制度であることです。自治体はこの制度を積極的に活用すれば外部(他の大都市圏など)からスキルを持った優秀な人材を獲得できる可能性が高い(第7回目コラム参照)。もう1つは、竹森さんの世代(50歳前後)は私の取材の経験からも次の人生を模索している人が多く、移住も積極的に検討しています。この世代を対象とした移住支援制度を予算面の都合がつけば検討したらいかがかと思います。
 また、今回の取材であらためて感じたことは、竹森さんが移住先のみやま市の地域や人に強く惹かれおり、この点も移住を決めた大きな理由です。昨年度の研修参加者の動向を分析した第4回目のコラムで、研修に参加した理由について「研修地の魅力に惹かれた」と回答した人は全体の14%おり、「移住先を探している」「農村や里山で暮らしたい」「農業のある暮らしをしたい」「農村を活性化させたい」を加えた移住の可能性がある人は全体の4割を超えています。移住、2拠点生活を模索している人は予想以上に多い。SNS、イベント、説明会、広告などを活用して土地の自然や歴史、産業など地域の魅力を継続して発信すれば、関係人口を呼び込める大きな可能性があります。
 50歳を超えて初バイクの竹森さんが風を切って市内を回る姿が目に浮かびます。竹森さんのご健勝とますますのご活躍、みやま市のさらなるご発展をお祈り申し上げます。 以下は、みやま市地域おこし協力隊と担当の清水山荘のインスタグラムです。どうぞご参照ください。

(編集長)

《竹森祐子さんをご紹介します》

 仙台市出身の竹森さんは、東日本大震災を体験して息子さんが口にする食べ物のことを考えるようになり、遠方から野菜を取り寄せるなど農業に対する関心が強くなりました。一昨年に(みやま市隣接の)八女市で九州のムラ様が主催したキウイ農家の研修に参加しとても楽しかったので、みやま市の研修にも参加。みやま市との縁が生まれました。震災で体験して海の怖さを知り、その怖さのイメージが少ない当地域で、半農半Xで農業をしたいと移住を決意しました。

《竹森さんへのインタビュー》

1)昨年の研修を経てみやま市の地域おこし協力隊に応募し、赴任するに至った経緯や思いについて教えてください。

―みやま市の研修参加後に応募した隣接市の地域おこし協力隊(2案件)には選考されませんでしたが、息子と話し合い2023年12月31日で退職(仙台市の駅ビル施設管理)を決め、12月中にみやま市へ引っ越そうと準備を開始しました。住居は、みやま市の研修でお世話になった北原さん(北原園芸)の知人の古民家アドバイザーの山城さん(みやま市在住)から紹介いただいた古民家の物件です。
 24年1月初旬にみやま市の地域おこし協力隊の募集情報を知り応募。1月末に合格通知をいただき、2月22日みやま市民となりました。

2)みやま市に移住することを決めた理由と思いについて教えてください。

―1.研修時にみやま市役所の農林水産課さんと何度も直接お会いし、親身な行政だと感じたこと。
 2.みやま市の研修受け入れ農家さん2軒(大黒園さん、北原園芸さん)の常により良くして前へ進もう!楽しくやろう!という考えに共感したこと。大黒園さんのミカン選果、販売、加工を担うコクヨウさんは、社長さんはじめ全員女性!でパワフルなところに憧れたこと。
 3.古民家アドバイザー山城さんの古民家に対する熱い情熱と愛情に感動したこと。大好きな大道谷の里(一昨年の八女市の研修の受け入れ先)から一山お隣という距離で安心感があったこと。
ーなどが理由です。

3)地域おこし協力隊に応募を決めた理由について教えてください。

―息子が医学科5年生で卒業前の時期であり、1人親で貯蓄が無いーという状況。息子の学業に影響せず移住しようと月額給与が確保できる協力隊に応募しました。
 また、和歌山県由良町の先輩隊員のアドバイスで「協力隊という肩書があると地域の人も安心して受け入れてくれる」という言葉も決め手となりました。

4)みやま市の地域おこし協力隊で予定されている任務や何をやりたいか、赴任にあたっての思いなどを教えてください。

―清水寺(注参照)の麓に位置する福岡県みやま市農林漁業体験実習館「清水山荘」(きよみずさんそう)の管理、宿泊対応、PRに伴う企画運営が任務です。程よい高低差で九州オルレコースに含まれる清水山荘の気持ち良さを知ってもらえるよう頑張ります!
みやま市の農業を知って体感できる企画も市役所へドンドン提出し実現できるよう、任期3年目の先輩のご指導とOBが残された企画書で勉強中です。そして何より私自身が「みやま市」を楽しんで満喫することを大切にします!
〈注〉清水寺は、清水山の中腹に最澄(伝教大師)が開いた天台宗の古刹(こさつ)で、大坊庭園は室町時代に禅僧の雪舟が造ったといわれ、国指定名勝に選定されている。
みやま市の地域おこし協力隊に赴任後、竹森さんは同隊のSNSに日々投稿 している(竹森さん提供)
みやま市の地域おこし協力隊に赴任後、竹森さんは同隊のSNSに日々投稿 している(竹森さん提供)

5)移住する方へのアドバイスをお願いします。

―行政の施策では、東京圏からの移住、若年層や夫婦、小さいお子様連れが優遇されますが、政令指定都市からの50歳超えの年齢では補助はゼロ。私が移住するためには協力隊制度は、神様からのギフトです。収入が確保されているという安心感は、見知らぬ土地へ移住して生活を楽しむためには重要だと実感しています。
 このたび移住を期に原付きバイクのデビューをしました。51歳で初バイク!バイクショップの方は驚かれておりました・・・。車両とは違い空気や太陽の熱を直接感じながらの移動は「冒険」感が増して面白いです!!人や車両が少ない田舎だからこそのバイクデビュー!オススメです。

6)移住した今の気持ちはいかがでしょうか。

―私1人の意思や希望、頑張りでは移住に至らなかったと強く感じます。
 周りの色々な方々の地域への愛情、農業への愛情、古民家への愛情からくる思いやりや優しさの賜物だと感じています。息子にも感謝しています。(大学の)卒業前なのにお母さんの人生だからいいよと。ありがとう!私自身は出たとこ勝負の性格なので、周りの皆様が素敵な人だからこそ移住できました。楽しく生活できています!
担当の清水山荘のSNSへ投稿(竹森さん提供)
担当の清水山荘のSNSへ投稿(竹森さん提供)

《編集後記》

 竹森さんはみやま市に移住する経緯や思いを率直に語ってくれました。インタビューから、新しい土地で新たな人生を歩んでいく弾む気持ちが伝わってきます。移住を検討している方、移住者を受け入れる側の自治体の皆様双方にとって参考になる点が多数ありました。
 まず、みやま市に移住を決めた理由について竹森さんは、「親身な行政だと感じたこと」と回答しています。この点は移住者共通の理由といえます(第4回目コラム参照)。次に地域おこし協力隊が移住者の受け入れに有効な制度であることです。自治体はこの制度を積極的に活用すれば外部(他の大都市圏など)からスキルを持った優秀な人材を獲得できる可能性が高い(第7回目コラム参照)。もう1つは、竹森さんの世代(50歳前後)は私の取材の経験からも次の人生を模索している人が多く、移住も積極的に検討しています。この世代を対象とした移住支援制度を予算面の都合がつけば検討したらいかがかと思います。
 また、今回の取材であらためて感じたことは、竹森さんが移住先のみやま市の地域や人に強く惹かれおり、この点も移住を決めた大きな理由です。昨年度の研修参加者の動向を分析した第4回目のコラムで、研修に参加した理由について「研修地の魅力に惹かれた」と回答した人は全体の14%おり、「移住先を探している」「農村や里山で暮らしたい」「農業のある暮らしをしたい」「農村を活性化させたい」を加えた移住の可能性がある人は全体の4割を超えています。移住、2拠点生活を模索している人は予想以上に多い。SNS、イベント、説明会、広告などを活用して土地の自然や歴史、産業など地域の魅力を継続して発信すれば、関係人口を呼び込める大きな可能性があります。
 50歳を超えて初バイクの竹森さんが風を切って市内を回る姿が目に浮かびます。竹森さんのご健勝とますますのご活躍、みやま市のさらなるご発展をお祈り申し上げます。 以下は、みやま市地域おこし協力隊と担当の清水山荘のインスタグラムです。どうぞご参照ください。

(編集長)